地球フォンダン化

エピソード文字数 921文字

 現世では気温の上昇によって大規模な災害が続いていた。
 「このまま地表が暖められると地球内部のマグマが溶け出してしまいます。」
 閻魔の元に、報告が入る。
 「困った。」
 災害で犠牲者が増え、あの世の人口が増えるのも問題だが、それ以上に地獄は深刻な事態になるというのだ。

 「酷寒の氷が解ける?そんなことは大した事ではない。温められた地下から地表に向けて大量のガスが噴出す。やがて地表が冷え始めたときどうなると思う。」
 閻魔に聞かれて、答えに詰まった。
 「地下の気圧が下る。すると地表が落ちて陥没する。」
 閻魔は茶色の頂上の少しへこんだケーキを割った。中からはさらに濃い色の液状の物体が流れ出す。
 「フォンダンショコラ。まさにこのケーキのように冷えた地表が陥没してくるのだ。」
 地球温暖化の後にやってくるフォンダン化。これこそが真の厄災なのだ。

 「極寒地獄の拡張をする。ついては、降雪機が必要だ。しかも余分な熱の出ないものが。」
 厄介な仕事が来たものだ。餅は餅屋。さっそく、雪女に相談した。
 「それは、無理ね。地獄にも物理法則はある。寒冷地獄の熱は灼熱地獄に送られて相殺されているの。だから、地獄を冷やすということはできないわね。」

 なるほど。となれば、余った熱をどこかに保管し、冷え始めたら取り出してくればいい。ただ、そんな都合のいい場所があるかってことだ。
 「そんな渋い顔してないで。ゲームをして遊びましょう。」
 雪女の言葉で、連想ゲームが始まった。いきなり、最初。思わず、
 「寒いところ。」
 といってしまった。
 「寒いところ。と言えば。氷。」
 「氷と言ったら北極。」
 「北極と言ったら、クマ。」
 「クマと言ったらウサギ。
 「ウサギといったら月。」

 「月だ!」
 大声で叫んだ。地上の罪人は地獄に落ちる。月の罪人は地上に落ちる。そう、月と地獄は地上を経由してつながっているのだ。地上から月に熱を逃がせば・・・。

 こうして、月は巨大な蓄熱装置になった。
 「今夜の月は、ひときは明るいねえ。」
 地上では、のんきに月見ををしながらだんごを食べていることだろう。地獄の苦しみも知らずに。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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