けげんな、きょういく?いいんかい

文字数 760文字

 いじめはなさそうだが、そうなると話がややこしくなった。
 「被害者が真実を言いにくい状況だったのでは?」
 そういわれると、反論する証拠がない。

 「加害者はいじめのつもりでも、被害者は感じて無いとか?」
 それって、逆じゃないの?そう思ったが、口には出せない。
 「じゃあ、報告にいきましょうか?」
 担当の鬼が言った。
 「そんなんで?」
 ねちねちと聞かれた割には、あっさりと進んで少々心配になった。
 「けげんな顔しないで。今日行く?」
 「いいんかい。」

 死後の世界では、己の心で罪が決まるらしい。邪心の無い者が悪いことをしても罪にはならないが、邪心のある者がよいことをしても偽善という罪になる。
 「加害者側にたって検証してきてください。」
 やはり、再調査を命ぜられた。
 「加害者に罪の意識があるから更正させられるんです。罪の意識の無いものに同じことをしても苦痛を感じないでしょ。地獄というのは本人の行動を体現させて、反省させるところなんです。」
 まあ、もっともだ。
 あの世にも極楽にいて優遇されている連中がいる。雲上のかれら浮遊層の話はふわふわとつかみどころが無い。一方で獄卒はお化けや鬼など偶像化により、霊偶されている。
 不満があることは理解できる。だからといって、同僚をいじめるだろうか?
 「やさしい、先輩の愛の鞭ってやつじゃないの?」
 「じゃれてるだけだろう。」
 獄卒を取りまとめている役人たちはのんきだ。
 「真面目に働いても出世なんて無いしな。」
 「んだ。すべて閻魔のひいきの安倍トモ采配なんだから。」
 あの世は現世の映し鏡といわれるだけのことはある。
 「はいはい、任命責任はすべて私にあります。ですから責任を持って次の人を選びますよ。」
 いつもの決まり口上だ。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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