シンデモーターカー

文字数 559文字

 地獄は広い。高速移動できる乗り物が欲しい。だだっ広い荒野を眺め、ここはリニアが適していると感じた。しかし、鬼のエンジンのスピードなどたかが知れている。暇そうな鬼を見ていると、あいつらいつも金棒を持っているが、何の役に立つんだろうと思う。亡者の責め苦に使うわけでもない。
 「これは、ステータスだ。鬼といえば、巨人。巨人といえば赤バット。」
 こいつら野球でもやるのか?
 「あんな、こ難しいものできねえ。」

 ためしにボールを打たせてみた。運動神経はいい。力もある。
 「ブス!」
 ボールは金棒のとげに刺さった。そりゃそうだ。そこで鉄球を打たせた。
 「カキーン!」
 金属音とともに、重たい鉄球は空の彼方に飛んでいった。

 霊を乗せた鉄球を打たせてみる。あっという間に隣の地獄まで飛んでいった。霊は重さがほとんど無いので急な加速度でも衝撃を感じない。
 「霊・ガン!」
 武器のようだということで申請が通らなかった。

 「シニアモーターカー」
 これも年寄りっぽいので却下。
 「死ぬかと思うた。」
 飛んでいった霊が帰ってきた。いや、すでに死んでるだろ。

 その後、死者を地獄に送る際に、高速で送れるとその利用が検討された。
 「死んでもうたあかあ。」
 死者たちは、飛ばされる際に口々にこう叫んだ。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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