報告書

エピソード文字数 695文字

 「どうじゃ、ただで海外旅行にいけた気分は。」
 苦労して書いた報告書の束を受け取った閻魔に尋ねられたが、お茶を濁すような返事しかできない。だいたい、霊なんだから乗り物は乗り放題。
 「通常、自爆霊は磁場の影響で、遠くには行けん。せいぜい守護霊になってくっついていくくらいだが、守護霊は夜中でも自由なわけではない。それに、現地の魂狩りにあうかもしれん。地獄からの出獄の場合、渡航先も罪人引渡しの協定のある国でなきゃならん。」

 なかなかあの世も面倒なんだ。
 「長距離は、魔女のタクシー便で移動できるが、エリゴノミ症候群になる。」
 人気の魔女と不人気の魔女が運転手にもいるらしい。確かにほうきの後ろにぴったり密着して乗るんだ。いくらヘルメットをつけたところで、若くて美人の魔女のほうが楽しいだろう。
 「いや、魔女は年寄りのほうがいい。ゆっくり飛ぶし、各地の風景も解説もしてくれる。若い連中が使う掃除機は、速いが景色を楽しむどころではない。下を見ようと首をだせば衝撃波で頭ごと吹っ飛ばされてしまう。」
 新幹線の旅もいいが、鈍行で駅弁を食べながらのローカル線もおつなもんだ。
 「こないだも、途中みかん狩りをして、凍らしてくれたな。空の上だからなかなか溶けずに苦労したわい。船旅もよかったじゃろ。昔は、渡し守のカローンがゴンドラをこぎながら唄ってくれたもんじゃ。それはそれで、風情があったな。」
 地獄も時代と共に変わってるんだ。

 「今度からは、報告書は1枚にしてくれ。読むのも大変だし、紙ももったいない。単なる形式だから。」
 忘れていた。ここはエゴが渦巻くエコ・ランドだった。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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