日神屋

文字数 558文字

 狸八畳で教えられた、ゴリラの看板を目印にやってきた。
 「にっしんや、きそばウッホ。」
 ここがラーお面の販売元らしい。

 「何しましょ。」
 小柄な店主が出てきた。
 「私、店主の蕎餓鬼(そばがき)。うちの麺はコシが命だ。」
 奥から歌が聞こえる。
 「くっつけられて、こねられて、ついていく。ウッホ。」


 メニューをみる。針魔王、一種類しかない。
 「つなぎなし、十割ボーフラ麺。」
 店主は愛想笑いを浮かべている。
 「それ一杯。」
 というと、店内に次々と大声が響き渡る。
 「針魔王!」「針魔王!」「ボーフラの針魔王!」
 パリパリに揚げた麺がトッピングされツンツンと立っている。まるで剣山だ。硬いし痛い。
 「勢いよくすすって飲み込んでください。自慢は、ゴリラが作るホンキー昆布だしと、コシの強いけっこう噛めんのタレでしょう。おまけに、バナナの皮で、のどごしツルツル。完食すると、狸八畳のコンパクを使ったラーお面を進呈。」

 「景気はどうだい。」
 「それが、向かいにイタリアンの七味屋ってもが出来てさっぱり。悪魔の乳を使ったノコッタチーズのスイーツが売りらしい。」
 それは山羊乳のリコッタチーズのことだろう。山羊は悪魔の象徴だし。

 さっそく、木綿のハンチーカと赤いスイーツを売り込む。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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