ドロ~ン

文字数 735文字

 地上ではドローンが人気だ。こういうものこそ、だだっぴろい地獄には必要だ。しかし、そんな技術もなければ、電気もない。地獄における電気は雷など神聖なものとされている。むやみに使っていいわけではない。
「そうですかね。わたしなんて、自由に飛べますから考えたこともありませんね。」
 死神はのんきに答える。
「ドローンがあれば、霊なんて自動で運べますよ。」
「給料が下がっちゃいやですよ。死神は歩合制なんですから。」

 今までの功績で、すっかり閻魔と仲良くなった俺は直接、聞いてみることにした。
「ドローンの成果は所有者のものになる。しかし、金属機械のようなものはだめだぞ。何か作りたければ、自然エネルギーや自然素材を使うこと。」

 あの世にある飛行物体について、研究に研究を重ね、ついに一つの無公害浮遊物体にたどり着いた。それは人魂。やつらに運んでもらおう。夏の夜に、ふらふらしているぐらしかすることのない連中だ。いまや、お化け屋敷でも添え物ぐらいにかしかならない。

「お安い御用です。」
 そういって快く引き受けてくれた。
「試しに、こいつを閻魔庁まで運んでくれないか。」
 俺は、空箱を指した。
「お安い御用です。」
 人魂はじっとして動かない。
「運んでよ。」
「はい、お安い御用です。」

 ひょっとして、こいつらこれを繰り返すしかできないのか?
「さっきから、お安い御用ですっていってるでしょ。安くしとくさかい、料金前払いでっせ。」
 あの世にもお金はある。支払いを済ませると、空箱をもって消えた。その後、彼が閻魔庁に来ることはなかった。バックれたのだ。
「ドロ~ンされちゃいましたね。」
 死神のやつ、仕事が減らずに安心したのか、失敗をよろこんでやがる。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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