ドラム式洗濯鬼

文字数 374文字

 ある日、一体の霊がやって来た。着物にブーツと異様ないでたちだ。
「異国の連中もずいぶん来ちょる。きな臭いと噂じゃ。そこで、地獄の洗濯ぜよ。まずは防疫じゃ。」

 どうやらあの世で洗濯屋を始めたいらしい。
「地獄には、洗濯の習慣がないよ。」
 そういうと、男は
「じゃけん、儲かる。」
 と笑って答えた。

「洗濯板は手間がかかる。何かよい機械はないか。」
 世の中、ドラム式洗濯だ。
「そりゃええ。」
 早速試作にとりかかる。

 まずは大きな石を拾ってきた。それを浅い桶に入れる。水を貯めて洗濯物を入れた。
「これが、回るんか?」
 男に二本の木の棒を手渡した。
「これで叩きます。」
 バシン、バシント音がする。
「もっと、リズミカルに。ドラム式洗濯機なんだから。」

 男はこれなら鬼でも使いこなせそうだと、20式注文して帰った。その後、地獄の洗濯がうまくいったという話は聞かない。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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