第4話 ヤベーやつとヒデーやつ
文字数 693文字
半ば強制的に相模野のユニフォームを着させられて、カイトはぽつねんとベンチに座っていた。
兵悟がなにやら桜台のベンチと交渉している。
向こうには監督らしき人物と女子マネがいるのだが、こちらにはそれに相当するものがいない。
自軍を見渡せば、まだ体のできあがっていない小柄な選手が目立つ。相模野は兵悟がいうとおり本当に弱小チームで監督や顧問を置くこともできないのだろうか?
「控え選手の追加を認めてもらえたよ」
兵悟が帰ってきてどっかとベンチに腰を下ろす。
「きみは試合にはでないのかい?」
「おれは今日は監督だから」
部の存続がかかった大事な試合だから采配に専念するということか。
マウンドに目を向けると、桜台のピッチャーが投球練習をはじめている。
「あいつは
とてもそんなふうには見えない。端正な顔立ちで、ひとを寄せつけない冷たさは感じるが。
「キャッチャーはキャプテンの
わがままでジコチュー。自分に甘く他人に厳しい、とてもリーダーの器じゃないヒデーやつだ」
みたところ責任感の強い長男タイプだ。他の部員にも細かく指示をだしている。
「サードを守っている、あの赤毛は……」
こちらは三塁ベンチなので目の前の選手としばしば目があう。明らかにこちらを意識している。
「
一段と声をひそめて兵悟は眉間にしわを寄せた。。
カイトは思う。
桜台のチームはヤベーのとヒデーのしかいないのだろうか?
第5話につづく