第10話 監督命令!
文字数 711文字
「そうだ!」
「じゃあ、なんで打てるんだ!?」
「しかも特大じゃないかっ!」
部員たちが口々にわめきだす。
いくら油断していたとはいえ、滝沢の初球ストレートは簡単に打てる球ではない。しかもフェンスを遙かに越え、校長室の窓ガラスをたたき割ったのだ。
とても故障を抱えているとは思えない。
「そうはいっても……これはホントなの。信じてあげて」
樋口がカイトの肩に手をやり、部員全員をひとりひとり見渡すようにしていった。
最後に目をとめたのは監督の武藤だ。
ウソではないと直感的にわかったのか武藤がうなずく。
だが、部員はまだ納得してないようだ。更なる納得のいく説明を求めている。
(……やはり、こうなるか)
予想していたことだ。カイトは立ちあがると、みんなの前でおもむろにスパイクを脱いだ。
なにをはじめる気かと周囲の視線が集まる。
「Look me! ボクの左右の足の長さをみてほしい。4年前の交通事故で左の骨盤と大腿骨を粉砕骨折したボクは左の足が右の足より2センチほど短いんだ。
この状態でハードな練習をこなせばボクは膝を壊し腰を壊す。いまでも時々足が痺れることがある。後遺症に苦しんでいるんだよ」
それをいった瞬間、沈黙が場を支配した。
ひと目でわかる現実を目にすれば黙るほかはない。
「……ということだから」
カイトが再びスパイクを履いて、樋口とともにグラウンドを去ろうとすると――
「待て」
静かに武藤が呼び止めた。
「住む場所は――」
あるのかと訊く。
「わたしのところにしばらくは――」
樋口が口を開くと遮るように武藤が被せた。
「おれのところにこい!」
有無をもいわせぬ口調でいった。
命令だといわんばかりに。
第11話につづく
「じゃあ、なんで打てるんだ!?」
「しかも特大じゃないかっ!」
部員たちが口々にわめきだす。
いくら油断していたとはいえ、滝沢の初球ストレートは簡単に打てる球ではない。しかもフェンスを遙かに越え、校長室の窓ガラスをたたき割ったのだ。
とても故障を抱えているとは思えない。
「そうはいっても……これはホントなの。信じてあげて」
樋口がカイトの肩に手をやり、部員全員をひとりひとり見渡すようにしていった。
最後に目をとめたのは監督の武藤だ。
ウソではないと直感的にわかったのか武藤がうなずく。
だが、部員はまだ納得してないようだ。更なる納得のいく説明を求めている。
(……やはり、こうなるか)
予想していたことだ。カイトは立ちあがると、みんなの前でおもむろにスパイクを脱いだ。
なにをはじめる気かと周囲の視線が集まる。
「Look me! ボクの左右の足の長さをみてほしい。4年前の交通事故で左の骨盤と大腿骨を粉砕骨折したボクは左の足が右の足より2センチほど短いんだ。
この状態でハードな練習をこなせばボクは膝を壊し腰を壊す。いまでも時々足が痺れることがある。後遺症に苦しんでいるんだよ」
それをいった瞬間、沈黙が場を支配した。
ひと目でわかる現実を目にすれば黙るほかはない。
「……ということだから」
カイトが再びスパイクを履いて、樋口とともにグラウンドを去ろうとすると――
「待て」
静かに武藤が呼び止めた。
「住む場所は――」
あるのかと訊く。
「わたしのところにしばらくは――」
樋口が口を開くと遮るように武藤が被せた。
「おれのところにこい!」
有無をもいわせぬ口調でいった。
命令だといわんばかりに。
第11話につづく