最終話 燃ゆる空。
文字数 671文字
達森は背中を向け去った。
黄金山ナインもあとにつづく。
応援席を見あげると、たったひとりの応援団も消えていた。
「カイト!」
声が降ってきた。
有坂兵悟の声だ。
「負けたチームのことを気にしているヒマはないぜ」
自信たっぷりの口調でいう。いつのまにか晋之介から奪い取ったビデオカメラを手にしている。
「こいつで試合は撮らせてもらった。おまえがどの場面でてこようが、おれはきっちり抑えてみせる。
覚悟しとくんだな」
いささか高飛車な口調でそれだけいうと踵を返した。
「いつもあの調子なんで気にしないでください」
晋之介が如才なくフォローを入れてぺこりと頭を下げた。
「それより……足、悪いんですか?」
カイトの左足を見つめる目がきらりと光っている。
施術を受けたばかりのその足で1キロをダッシュして打席に立ったのだから多少のぶり返しはきている。
だが、さとられないように気をつけて動いたはずだった。
「まあ、とにかくうちが勝つんで無理はしないでくださいね」
そういって彼は消えた。
「あいつ、志木晋之介といいます」
いつのまにか藤丸が傍らにきていた。
「相模野のキャッチャーです。油断ならないやつですよ」
それはもう十分わかっている。甲子園というただ一枚のキップをめぐって天才たちがしのぎを削る世界。それが高校野球だ。
その激しい世界のなかで自分はこの足でどこまでやれるのだろう。
カイトは暮れなずむ天を仰いだ。
空が真っ赤に燃えている。
それは球児たちのだれもが胸に抱えている情熱の炎のようにカイトは思えるのであった。
第一部 最強の弱小編 了。
黄金山ナインもあとにつづく。
応援席を見あげると、たったひとりの応援団も消えていた。
「カイト!」
声が降ってきた。
有坂兵悟の声だ。
「負けたチームのことを気にしているヒマはないぜ」
自信たっぷりの口調でいう。いつのまにか晋之介から奪い取ったビデオカメラを手にしている。
「こいつで試合は撮らせてもらった。おまえがどの場面でてこようが、おれはきっちり抑えてみせる。
覚悟しとくんだな」
いささか高飛車な口調でそれだけいうと踵を返した。
「いつもあの調子なんで気にしないでください」
晋之介が如才なくフォローを入れてぺこりと頭を下げた。
「それより……足、悪いんですか?」
カイトの左足を見つめる目がきらりと光っている。
施術を受けたばかりのその足で1キロをダッシュして打席に立ったのだから多少のぶり返しはきている。
だが、さとられないように気をつけて動いたはずだった。
「まあ、とにかくうちが勝つんで無理はしないでくださいね」
そういって彼は消えた。
「あいつ、志木晋之介といいます」
いつのまにか藤丸が傍らにきていた。
「相模野のキャッチャーです。油断ならないやつですよ」
それはもう十分わかっている。甲子園というただ一枚のキップをめぐって天才たちがしのぎを削る世界。それが高校野球だ。
その激しい世界のなかで自分はこの足でどこまでやれるのだろう。
カイトは暮れなずむ天を仰いだ。
空が真っ赤に燃えている。
それは球児たちのだれもが胸に抱えている情熱の炎のようにカイトは思えるのであった。
第一部 最強の弱小編 了。