第6話 スーパーヒーロー登場!?
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そのタス兄の打席になった。
事前に情報を仕込んでいるようだ。相模野のピッチャーが大胆にも内角にボールを投げ入れてゆく。
タス兄こと神楽坂佑はむなしく三振に終わった。
内角の少々甘い球。ほとんどド真ん中に近い球でも神楽坂は平然と見逃した。
「逆をいえば、アウトコースの球なら必ず打てるということかな?」
ひとりごとのような呟きでカイトが疑問を口にすると――
「百発百中といってもいいかもしれない。タス兄の才能は偏りすぎてんだよ」
イトコを語る兵悟の口調には残念といった感情がこめられている。苦手なインコースさえ克服すれば名選手になれるのに……。
「おれはタス兄に野球を教わったんだ。あのころのタス兄はホントに頼もしかった」
小学生のころを回想したのだろう。神楽坂を見つめる兵悟の目の色は切なさに満ちているようだ。
「さて、これ以上、点差をひろげられるわけにはいかない。頼んだぞ」
急に切り替えて兵悟がカイトの背中をたたいた。
これは次の回からいけということか。
話が違う。カイトはただ座っているだけでいいのではなかったか?
7回表。
先頭バッターが出塁すると、突然、滝沢がコントロールを乱した。
次の打者をフォアボールで出し、ランナー一塁二塁。
つづく後続の二人を三振に抑え、ツーアウトとしたところでまたもやフォアボール。結局満塁にしてしまった。
「よっしゃー、お膳立ては整った!」
兵悟はベンチから飛び出ると主審を務める桜台の部員に高らかに告げた。
「バッター交代! リトル世界大会のスーパーヒーロー、カイト!!」
第7話につづく