第56話 インタイム!

文字数 465文字


 カイトは受付に桜台高校の学生証を見せると、選手通用口から一塁ベンチに向かってまっすぐ走った。
 通路がやけに遠く長く感じる。

「In time! (間にあってくれ)」

 声にだして叫んだ。
 懸命に足を前にだして駆け抜ける。
 ベンチに通じるドアが見えてきた。
 飛びつくようにしてドアノブに手をかける。
 力まかせに押し開く。
 光と叫声がどっと押し寄せた。
 なにかがグラウンドで起きたようだ。
 カイトはつんのめってたたらを踏んだ。

 その場にいた全員が立ちあがってなにかを叫んでいる。
 いちはやくカイトの存在に気づいたのは加奈だ。

「カイト!」

 その声にベンチの全員がいっせいに振り向いた。
 監督の武藤が信じられないものでも見るような顔つきでいった。

「カイト、おまえ……」

「試合は、ゲームはどうなりました?! How's the game?」

 カイトをふさいでいた人垣が割れた。
 カイトは身を乗り出してグラウンドを見た。

「ッ!――」

 カイトの目に飛び込んできたのは、バッターボックスで倒れている湯川の姿であった。



   第57話につづく
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