第17話 不穏な呼び出し
文字数 730文字
「カイトさんですね」
午後の授業が終わって廊下にでると、ふいに後ろから声をかけられた。
小柄で華奢な男がニコニコと目元口元に笑みを浮かべて立っている。
「ぼくは野球部一年の
と丁寧な口調でいった。
俗に言うヨビダシというやつだ。面倒くさいことにならなきゃいいなと思いながらもカイトは応じることにした。
藤丸の背中にくっついてグラウンドに入ると、彼がいったとおりマウンドで待っていたのは滝沢ひとりであった。
右腕にグラブをはめ、桜台のユニフォームを着、左手でボールをぽんぽんと弄んでいる。
桜台は試合があった翌日は、軽めの練習やストレッチで切りあげることが決まりだと加奈から聞いている。他のメンバーは早々と帰宅したのだろうか?
「お連れしました」
藤丸が滝沢にいった。
見ればわかるとでもいわんばかりに、滝沢は無愛想だ。顔かたちは端正で俗にいうイケメンだが、ひとを寄せつけない冷たさを感じさせる男だ。
カイトは空気をなごませようとして口を開いた。
「No money おカネは持ってないよ」
「アメリカ人ならマシなジョークをいえ」
これまた、にこりともしないでいう。
「実は滝沢先輩は――」
話が進展しそうもないので藤丸が代弁しようとした。
「前もいったとおりボクは野球部には入らないよ」
先回りしてカイトが被せる。呼び出しの用件としてはそれしかないだろう。
「いくらお願いされたってボクは――」
「お願いだと?」
今度は滝沢が被せてきた。鼻でせせら笑ってつづける。
「勘違いするな。おれはおまえに――」
ボールを握った拳を突きつけて滝沢はいい放った。
「勝負を申し込むんだ!」
第18話につづく