第52話 奇跡

文字数 492文字


 黄金山ナインがそれぞれの守備位置に散った。
 小野兄が左打席に入る。
 早くも送りバントの構えだ。
 それを見て内野陣がススッと前にでる。
 達森がセットポジションから第一球を投げた。

「ボール!」

 ボールが2球つづけて先行した。カウントはツーボールノーストライク。

「達森、打たしていけっ!」

 セカンドから檄が飛んだ。守っているのは、セカンド田野倉の代打に立ってそのまま二塁の守備についている多田だ。

(低めに集めろ。転がせば野手が拾ってくれる)

 宮田も意志をこめてサインをだす。
 バントを警戒してフォアボールでランナーをためるのが最悪のパターンだ。
 達森の(はら)は決まった。
 右足をあげて投球モーションに入る。
 第三球を投じた。

 インコースを突いたボールが向かってくる。
 小野兄はバットを引いた。
 バットを短く持って内角ストレートを思いっきり叩く!

 打球は鋭く、達森の軸足を抜けた。
 教科書通りのセンター返しのバスターだ。

(やられたっ!)

 達森は思わず唇を噛んだ。
 はじかれたように後ろを振り向き、打球の行方を追う。
 だが、そこには未だ経験したことのない奇跡が描かれていた。



   第53話につづく

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