第3話 大親友?…の懇願 

文字数 682文字

「Really!? ホンキかい?」

 思わず英語の発音がでてしまった。
 有坂兵悟がいうには相模野の控え選手として対桜台の練習試合にでてほしいとのこと。

「Why?」

 なぜ? とさらに聞き返す。野球はできないといまいったばかりではないか。

「これには深刻な事情があるんだ」

 泣きそうな顔になって兵悟が理由を打ち明ける。
 相模野高校野球部は神奈川県内でも最弱の野球部であって、今回の練習試合で勝たないと廃部処分になってしまうという。

「その様子じゃ、一打席ぐらいだったら打席に立てるだろう。おまえのその天才的なバッティングで局面を変えてほしいんだよ」

 なぜか劣勢に立たされる前提でこちらの活躍を見込んでいる。

「うーーん……」

 父親・悠造との約束もある。日本にきて早々、この約束を破るわけにはいかない。

「じゃあ、こうしよう。とりあえずウチのユニフォームをきてくれ。ベンチに座っているだけでいい。向こうはリトル世界大会の英雄が座っているだけでビビる。こっちは心理的に優位に立てるという作戦だ」

「……それだったら」

 不承不承カイトは承諾した。もう4年も前の話だ。アメリカの野球好きならともかく、この日本でカイトのネームバリューがそれほどあるとは思えないが、廃部がかかっていると聞いてはむげにも断れない。

「ありがとう! やっぱりおまえは大親友だ!」

 兵悟は勝手にカイトを親友認定しているが、4年前の親睦会での顔見知りに過ぎない。

(そういや、相手を自分のペースに巻き込む戦術は得意だったな)

 カイトは肝心なことをようやく思い出した。有坂兵悟という男の恐ろしさを……。



   第4話につづく

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