第53話 食事風景

文字数 882文字

 昨日、夫の従兄弟からお中元が届きました。数種類のおかず。助かるわ〜。贈り物はこうでなくっちゃ。

 夫が定年になる前から、朝昼の食事は各自で摂ることにしている我が家。夕食はなるべく手を抜かないように心掛けているが、その他は自分だけのことなので、なるべく簡単に済ませたい。お惣菜のお中元は、まさに救世主だ。

 夏のキッチンは、家の中で一番暑い。最近は扇風機を持ち込み、多少は我慢もできるが、ときどき風向きがガスコンロの火に当たり、ヒヤリとさせられる。私が夕食の準備にかかる平均時間は1時間半。品数は3〜4。手順は時間のかかる物から始め、同時に不要になった調理器具を洗う。おかずが出来上がるころには、洗い物もほぼ片付いている。途中途中で飲み物を摂るくらいで、休憩を挟まず立ちっ放し。最近、コレが疲れる。

 食べる時間は、せいぜい20分。6人用のテーブルに、夫婦ふたり、(はす)向かいになって座り、黙々と食べる。夫の言ったか言わないかくらいの「いただきます」 はときどき目撃。私がキッチンに立っているときがほとんどで、面と向かっては言わない。食事中、ひとことふたこと会話があればいいほうだ。今となっては、別段話すこともないから気にしていない。「美味しい」 は言わないが「コレ、何?」 と不審な料理には説明を求める。「ごちそうさま」 は言わない。

 静かな食卓は今に始まったことではない。子どもたちがいるころからだ。夫は食べながらのお喋りを嫌う。他人との会食はできるのに、家族には「食べながら喋るな」 と頑なに言い放つ。いつしか我が家の食事は静かなものになった。ときどき帰る実家での食事は、我が家とは比べものにならない。独立した子どもたちは、呪縛?から解き放たれているのだろうか。

 この現状を知る友人は、主人が恥ずかしがり屋だと分析します。優しい私は、騙されてあげています。ここまでに何度山を越えてきたことでしょう。疲れも疲れたと感じなくなりました。慣れてしまったのか、麻痺してしまったのか。この感覚を守りに入ったと言うのでしょうか。何年経っても、夫の琴線に触れることができていません。
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