第29話 口は禍の元

文字数 857文字

 明け方まで降った雨が止んで、眩しいくらいの晴れ間になりました。空気は少し冷んやり。マイナスイオンのシャワーを浴びているような心地よさです。

 そんな空気とは裏腹に、舌が痛い。夜中に「痛っ!」 寝ているときに舌を噛んだ。食事の夢でも見ていたのか。全く覚えていないが、舌は確実に負傷した。この感じは流血ものだなと思い、寝ぼけ(まなこ)で、ティッシュを口の中へ。また眠りに就く。

 怪我をした直後は、痛みが少ない。脳に届くまでのタイムラグか。朝になり、昨夜のことは夢ではないと舌が訴える。

 私はマウスピースを持っている。している、と書けないのは毎日は付けていないからだ。歯ぎしり防止用のもの。コレを付けていたらこの話もなかっただろうに。痛し痒し……

 自分が歯ぎしりをしていることが分かったのは数年前。定期的に通う歯医者さんに指摘された。「寝ているときのことなので、全く知らなかった」と言うと「歯ぎしりする人は、上顎に凹凸がある」と一目瞭然、明々白々な答えをもらった。確かにボコッている。コレはみんなそういうものだと、老いの入口に来るまで思っていた。他人の口の中なんて、頼まれても見たくない。ましてや比較するなんて、想像もつかなかったから。

 今の歯医者さんに担当してもらう前にも、何人かに診てもらっていたが、何も言われなかった。それもそのはず。アラ還に来て、歯ぎしりは

宜しくないらしい。歯が擦り減るのはもちろん、歯茎も弱くなっているので、グラついてくるんだと。だから、マウスピース。

 上の歯全部の型を取って作られた、シリコン製。違和感が少ないようにと、薄い物と通常の厚さの物を作ってもらい早数年。うっかり忘れる日もあれば、気楽な口で寝たいときもある。こんな自分勝手な付け方をしていて、舌を噛んだ。毎晩付けなさいと歯医者さんの顔が浮かんできた。

 起きているときは、入れ歯と同じようなケースに収まっている、マウスピース。最近、入れ歯と同じような泡の洗浄剤が出来て、お手入れ簡単になりました。入れ歯と……
確実に歳取ってきてますね、私。
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