第1話 できることからコツコツと

文字数 859文字

 昨日の晩御飯は、ベトナムのフォー、韓国のチヂミ、アスパラガスの肉巻き。このメニューに共通するものは何でしょう。すぐにわかった人は、ウチの住人か、はたまた私と同じセンスの持ち主か。正解は、冷蔵庫の残り物です。正解の人、想像力豊か、もしくはウチの住人。フォーは、つけ汁のヌクマムが期限ギリギリ。チヂミはミツバが大量に余っていて途方にくれて。アスパラガスというより豚の薄切り肉が3枚残っていたから。

 日々口実のほうで少しふれたことがあるが、ウチは朝・昼御飯はセルフサービス。つまり夫が自分で作って食べている。だから、私は晩御飯のみ。「らく出来ていいわね」と素直に思われているよりも、嫉妬めいた冷ややかな視線を感じるのは穿(うが)った見方か。傍目(はため)には良さそうに見えても、案外コレが苦労の種なのだ。こう書くと「何を贅沢な」とも怒られそうだが。

 このセルフ御飯には、私なりの気遣いがある。まず、朝御飯。前日どんなに疲れていても、流し台には洗い物を残さない。ガスコンロ、キッチンカウンターには物を置かない。つまり、ショールームのキッチンのようにスッキリにしておくのだ。これは目につく物を一ヶ所に片付けたがる、夫の癖を踏まえてのこと。だから、朝の何もないキッチン周りは、彼にとって心地いい空間のはず。食後の片付けも最近は、ほとんどやってある。ただし、流し台周りの水跳ねはそのままだが。問題ない。昼御飯はホットサンドイッチ。パンをオーブンで焼いて、チーズやハム、ポテトサラダを挟むのが、最近のお決まりメニュー。まな板の上で、焼いたパンを切るから、パン屑がカウンターに残る。その屑は私が拭いておく。なんでもない。

 この朝昼を経ての晩御飯。やはり買ってきた惣菜を器に移し替えて「はい、どうぞ」は、あまりにも不憫(ふびん)。だから、私は無い知恵を一生懸命絞ってメニューを考える。日に1回だけの料理だからこそ、なるべく手間をかける。たとえ冷蔵庫の残り物でも、自分の料理にして出す。顔を合わせる時間が増えたアラ還夫婦には、毎日を快適に過ごす術が必要なのだと思う。
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