第5話 運転は、ほどほどに

文字数 876文字

 「通行券をお取りください……」 高速道路入口のアナウンス。ウチの車はETCを付けていません。だから、隣のレーンを減速走行する車が羨ましいときもあります。でも、私にとって、夫にせがむほどの物じゃないんです。ただ、ゲートを抜けた後の合流が、最近怖いなと感じるようになりました。まあ、仕方ない、アラ還だもの。

 高速道路は単調な道のうえ、信号で止まることがない。2時間ほど走ったら休憩した方がいいとよく聞くが、最近は長距離も走らず、せいぜい1時間止まり。そんな短時間でも眠気が襲うときがある。休憩しようにも、サービスエリアまでは数分走らなければならないこともある。そんな時どうするか。私は左手をパーにして、自分の太ももを叩く。昨日もそれで、難を逃れた。そして、こう叫ぶ「あと◯㎞だ、ガンバ〜れ!死ぬんじゃないぞー!」もちろん同乗者がいる時は、太ももだけになるが。

 初めて自分の車を持ったのは25歳のときだった。最寄りの駅から自宅までが少し遠いのと、残業で帰りが遅いのが理由で。それまでは父が迎えに来てくてれいた。当時よりも感謝の気持ちでいっぱいだ。車を持つと格段に行動範囲が広がる。駐車も上手くなる。もちろんだが維持費もかかる。もろもろのことを含めても、私にとっては大きな翼になった。

 車にも慣れた土曜日。会社の同僚と、長電話していてるくらいなら、ドライブにでも行こうということになった。行き先は私にお任せということで、いざ、西へ。西に向かったのは、同僚の家が私の家より西にあったから。車を走らせ、高速道路の入口へ。行き先は同僚にしてみれば、まさかの京都。到着時刻はすでに16時を過ぎていた。週末の京都。混んでいないわけがない。結局、とりあえず車から降りて、寄れた場所は渡月橋のみ。橋にタッチする恰好で、帰路へ。とても無謀なドライブではあったが、こうしてご披露できるほどの思い出となった。

 現在の私は冒頭にも書いた通り、常識ある大人、いやいや体力がついていけないだけの大人。だが、この遺伝子は、ひとり暮らしを満喫している我が子に、しっかりと受け継がれている。
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