第54話 甘い

文字数 912文字

 最近の『あんバター』ブームで、以前よりあんこを食べるようになりました。それは、おはぎや、あんこを練りこんだ食パン、あるいは、かき氷のトッピング……今や、あんこは年寄りくさい食べ物と言えませんよね。

 甘いものと言えばチョコレートだった私が、最近はあんこがお気に入り。スーパーでパックに入ったおはぎを見つけると、立ち止まり見つめる。考え込むような値段ではないが、食べた後の代謝を考えると直ぐには決められない。ただ、あんこがいい具合にもったり付いていたりすると、誘惑に負けることが多い。

 ウチの家族がケーキらしいケーキを食べるのは、それぞれの誕生日くらいだ。しかも、ホールではない一人用の物。そして生クリームが主張していない物。モンブランやチョコレートケーキ、チーズケーキなどがそれだ。誕生日の料理は、少し豪勢。だからお腹いっぱいになって、ケーキが翌日に回されることは珍しくない。ウチの家族に限って言えば、ケーキは料理と同じ腹である。

 もう三十年以上も前に行ったニューヨーク。空港に着くと、日本人ガイドが待っていた。私よりも少し年上の男性。翌日は市内観光をした。そのとき立ち寄ったフルトン・マーケットで食べたケーキは今も脳内に残る。大粒のチェリーが入ったチーズケーキ。かなり甘かったがマズくはなかった。ただ、本物のアメリカンサイズの大きさと甘さは、完食できない物だった。一緒に行った幼なじみが食べたケーキは、砂糖の塊なような味で、食べきるどころか、ひと口で根を上げた代物。私も味見してみたが、お世辞にも美味しいとは言えなかった。

 初めて食べた異国の味は、私を海外に迎え入れてくれた気がした。その旅では、いろいろな物を好奇心の赴くままに食べたが、1つとして食べられないと感じた物はなかった。逆に幼なじみは、ことごとく合わず、日にちが進むにつれ、少しずつ痩せていった。肉が苦手だったことも理由の1つではあると思うが……

 今まで、いろいろな友人と海外旅行をしました。ニューヨークで食べたケーキを境に、私の選ぶ食べ物は美味しい物が多くなったと思うんです。でも、友人に言わせると「あなたは、なんでも食べられるだけ」ということらしいですが。
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