第38話 七夕素麺

文字数 880文字

 笹の葉さらさら、軒端に揺れる、お星さまキラキラ、金銀すなご〜♪『すなご』の意味もわからず、歌っていた幼いころ。昨夜は七夕でしたね。短冊にお願い事を書きましたか?

 子どもたちが家を離れ、季節の行事も薄れてきた近ごろ。七夕には素麺を食べるらしいが、ウチではやったことがない。冷麦の束にピンクや薄緑の麺が2,3本チョロリと入っていた物は食べたことがある。缶詰のみかんも浮かんでいたっけ。カラフルな素麺を見つけ、購入。箱の中に5色。ひと束毎に色が違う。ピンク、黄色、薄緑、薄紫、白。短冊の色に合わせているようだ。短冊も色によって書く願いが決まってるとか。そうだったっけ?馬耳東風。

 子どもたちが幼稚園のころ、お正月、ひな祭り、母の日、端午の節句、父の日、七夕、十五夜、敬老の日、クリスマスと毎月のように「お(ウチ)でお祝いしてくださいね」と幼稚園からのお便りがあった。そして子どもたちは、行事に合わせた工作をせっせと家に持ち帰る。七夕の笹飾りも、もちろんあった。園児全員の笹を乗せた園バスは、さぞ(ざわ)ついていたことだろう。

 色付き素麺。そう言えば以前お目にかかっていた。奈良県にある大神神社(おおみわじんじゃ)に行ったときのお土産。大神神社は、ひと山全部が御神体。最強のパワースポット。ご存知の方もいらっしゃるのでは?(ふもと)で記名してから、山に入る。それだけ侮れない場所ということ。1時間くらいは登ったか。頂上に近い所に参拝の(やしろ)がある。何をお願いしたか覚えていないが、鬱蒼とした山道は少し涼しく、霊験あらたかな空気感があった。

 帰り際、素麺を食べさせてくれる食事処に入った。その店で売っていたのが、色付きの三輪(みわ)素麺。そのときも色付きが珍しくて、何種か買った。一応それぞれに味は違うようだが、(つゆ)に浸けてしまえば、普通の美味しい素麺。味覚を目で楽しむ粋な心を持ち合わせたい。

 友人7人で行った日帰り旅。とても楽しかったので「また何処かへ行こうね」と談笑してから十数年。あのときの約束は、まだ果たされていない。

 夫とふたりの夕食だけど、七夕の素麺を食べました。お願い事は、離れている子どもたちの幸せです。





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