第49話 呼び名

文字数 889文字

 苗字じゃなくて、名前じゃない、呼び名を持っていますか?私は小学生から学生時代まで、ずっと同じ呼び名。社会人になってからの友人には呼ばれない名前。

 私の呼び名は、名前の短縮形。結構気に入っている。アラ還の私を一気に昔の純粋な?(照)私に戻してくれる不思議な言葉。それぞれの年代で、少しずつ友人は変わっていたはずだが、呼び名はずっと変わらない。新しい友人ができるたびに、自分で伝えていたのかもしれない。「私を◯◯って、呼んで」 と言ったか言わないか。覚えていない。

 週に一度、1時間のゴルフレッスンを9名で受けている。先日、前の時間帯に受講者から「あなたの時間のメンバーは、みんな熱心ね」 と褒められた。恥ずかしい。持ち上げられたことが、ではなくて、私には当てはまらないことが。ガンガン打って40分ほどで、早々に帰る。当然1抜け。時間の延長はいけないが、早く帰る分には問題ない。「早いね〜、もう終わったの?」 帰り際、ひとりふたりに必ずそう声をかけられる。いつもの流れ。もちろん、先生のアドバイスをレッスン中に必ず聞いてからのこと。

 滞在時間の短い私だが、メンバーとは数年のつきあいなので、気心は知れている。一緒にラウンドする回数が多いメンバーほど、下の名前で呼び合っている。聞いていて、安心感を覚える。私は苗字で呼ばれるのが常だが、先日同じチームになってプレーした人に『下の名前+ちゃん付け』 で呼ばれた。呼んだ人は自然体。呼ばれた私は赤面。私の立ち位置を一歩近づけてくれているのがわかった。

 ラウンド中そう呼んでくれたのだが、スコアを伝えるときの私は頑なに自分の名を苗字で伝えた。恥ずかしさが先に立って、どうしても言えない。その場のノリや協調性が必要なのはわかる。でも、私が出来ないことを知ってほしいと、それとなく伝えたかった。メンバーは大人だ。ちゃんと汲み取ってくれ、後日のラウンドでは私を苗字で呼んでくれた。

 自分が親になったころから、ちゃん付けや下の名前で呼ばれることに違和感を感じました。『子どもたちの前では大人でなければ』 と思う私の潜在意識が働くのかもしれません。
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