第28話 ご近所

文字数 938文字

 我が家の西の道路の向かい側に、四世帯の二階建アパートがあります。昨日の午前中に引越し業者のトラックが停まりました。一階の部屋が空いているようだったので、どなたか入居されるようです。

 だからと言って、ウチとの接点はおそらくない。ただ、興味本位にトラックを眺めていただけ。アパートの前には6台分の駐車場がある。部屋が満室でないときも駐車場だけは、満車になっていることが多い。住人以外にも貸しているのかもしれない。ウチがここに家を建てたときは、影も形も無い更地だったが、まさかアパートが建つなんて……

 ウチの真向かいにも、八世帯のアパートがある。以前このアパートと少しトラブルになった。ゴミ集積所の扱いで。原因はカラスなのだが対策が甘く、何度か玄関先にゴミが散乱した。こういうとき、個人宅なら2度目は無い。近所づきあいには、最新の注意を払う。ご近所トラブルになろうものなら、生涯かけて手に入れた物を手放しかねないからだ。

 ピンポ〜ン〜。インターホンのカメラ越しに、警察官が立っていた。一瞬、何ごと⁈と玄関へ急ぐ。そこには、色白で大人しそうな若者もいた。「夜中に何か物音を聞きませんでしたか?」 と。若者は新しく出来たアパートの住人で、駐車してあった車を盗まれたと言う。その車は、少しマニア向けの物だったようで、ターゲットになってしまったと警察官は付け加えた。若者の身なりからもアンバランスな感じがしたが「聞かなかった」 と応えると、残念そうな顔をされ、私もなぜか気落ちした。陽射しの強い日で、彼らの額には汗が滲んでいた。

 ほどなくして、若者が住んでた部屋のカーテンが無くなっていた。車は見つかったのか?この場所から早く離れたかったのか?思いが駆け巡ったが、知る由もなし。そういえば、ここに住み始めたころ、ご近所の何件かが、空き巣の被害に遭っていると聞いた。泥棒たちは、表札に小さな目印を付けるとか。ウチのは大丈夫か?
「コレは……」 小さな虫だった。

 この家に住んで20年経ちました。まだ空き巣の被害には遭っていません。たまに、何処かしらの鍵が空いていることもあります。あぶない、あぶない。もし、入られたときのために多少のお金を置いておく方が良いとか。あなたなら、いくらにしますか?


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