第25話 テスト勉強

文字数 840文字

 昼ごろ車を走らせていたら、高校生らしき自転車群団に遭遇しました。「こんな時間に、どうしたんだろう」と通り過ぎたのですが、思い出しました。今、中間テストなのですね、きっと。

 子どもたちが高校を卒業してから、10年近くになる。学校行事のあれこれは、私の中の風物詩からすっかり消えてしまったようだ。夜中に目が覚めて、トイレに行った。ふと、南側隣の2階を見るとまだ明かりが点いている。午前3時。隣には、高校生くらいの子どもがいる。

 上の子が高校生のころ、漢文のテストを明日に控えた夜に、教科書のチェックを頼まれた。日付が変わるかどうかの時間。高校の漢文も難しかったが、それよりも私は眠かった。この日に限ってというわけでなく、弁当作りで毎日早朝に起きていたからだ。でも、子どもに頼まれたら「嫌だ」 なんて言えない。日ごろ「勉強しろ」 と言っている手前、口が裂けても。

 子どもが漢文を読み始める。私は教科書を見ながら、読み間違いを指摘する。最初は布団の上に座って見ていた。どのくらい経ったか忘れてしまったが、子どもに起こされた。寝ていたらしい。
「ごめん、ごめん」再開。
……、…………。ZZZZZ。
「お母さん!」
「すいません」再開。
さすがに3度目には
「もういい、ありがと……」
決して、漢文が読めなかったわけではない。

 どんな漢詩を読んでいたのか、全く記憶にないが、この出来事だけは今も鮮明に覚えているし、申し訳なかったとも思う。

 私が中学生のとき、勉強していたところが丸々テストに出て、満点を確信したことがあった。しかし、満点は取れなかった。なぜか。問題を一部見落として記入出来ていなかった。答えられる問題だったのに。初めて自分に怒りを覚えた。
「なんて、私はバカなんだ!」
当時、大切にしていたアイドルの下敷きを破ってしまうほどの憤りだった。

 自分に腹を立てることなんて、今では日常茶飯事です。でも、いちいち沸騰していたら、物事が進みません。妥協、譲歩、許容範囲……自分に甘い大人になりました。
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