第43話 先生になる日

文字数 877文字

 久しぶりにお客さまがみえました。おひとりは急用が入り、少し遅れるとか。リビングにお通しして、しばらく近況報告。「では、そろそろ始めましょうか」

 私は専業主婦だが、ときどきリビングで『ハーバリウム』を教えている。それは何ぞや?と思う人にご説明。花屋や雑貨屋で瓶の中に入った花を目にしたことはないだろうか。詳しく言えばプリザーブドフラワー(ドライフラワーのような物)が専用のオイルに漬けられている瓶詰め。コレを教えている。

 お客さまは生徒さん。雑談時間も含めると三時間ほどのレッスン。時間内に瓶2本を仕上げてもらう。専用の道具や花材など、全て私が準備するので、生徒さんは手ぶら。最初に数種類ある瓶の中から2本選んでもらう。どんな感じの物が作りたいかを聞く。あとは自由に花選び。専用の長いピンセットを使って、選んだ花とオイルを瓶に入れて完成。だいたいこんな流れ。

 私の役目は、ひたすら生徒さんたちの質問に答える。思い通りにやってもらうのが基本だが、目に余る状態のときは、私が手直しをして続けてもらう。ハーバリウムの美しさは、空間のバランス。初めての人は必ずと言っていいほど、てんこ盛りに入れるが、分量を覚えてほしいので、そのままやってもらうことにしている。作る回数が多い人ほど、花の量は少ない。

 五年前、ハーバリウムと出合った。最初に見たのは雑貨屋。そのあと立て続けにいろいろなところで見た。「コレをやれってこと?」 と勝手に解釈。それからスクールを探し、資格の取得まであれよあれよという間にやり終えた。私が学んでいたころは少しブームになっていて、花材の売り切れが続出。3件ほどの店に足繁く通いながら、花材を集めてはハーバリウムを作った。資格を持っていても、すぐには人に教えられない。コツを頭で覚えただけで技術が伴っていないから。一年ほど練習に費やした。その後、知り合いに体験してもらい、口コミのみで生徒さんをとっている。

 コロナ禍になり、昨年はできませんでした。そして今も以前のようにはやっていません。今回は2名。生徒さんの要望でレッスンをお受けしました。

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