第33話

文字数 809文字

「あたりだった」ってどういうこと?

 いや、自分で書いておいてなんだけど。

 カズキは、混乱していた。
 今までのメールのように拒否されていたら、それはそれでしかたがないことだし、むしろそのほうが一般的には普通なことだった。
 ボケたら「なに言うてんねん」と返されるべき、それが普通というもの。ところがボケに、「そうです」と真顔で肯定されてしまった、みたいな。

 一つの事実として、「過去」については、拒否られなかった。
 澤野井美琴は、じつは過去人だったのか?

 もし、これが未来人だったら、超スーパーな科学技術の結晶たる「ギターがうまくなる薬」とか「試験問題を自動でといてくれるペン」とか、便利なものをポケットから出して使わせてくれて、ちまたの凡人たちをあざ笑うかのごとく天才の名をほしいままにできたかもしれない。
 しかし過去からの人だったら、足踏み脱穀機、とか、自家製味噌、とか、そういう昔のものを”素朴な純情エフェクトつき美琴さん”から「どうぞお使いください」と可愛らしく持ってこられても、やはり喜びは半ばだろう。否定はしないが、大喜びとはなりづらい。
 まあ、なにかとナチュラル志向が話題になる昨今、その土臭い届け物が、逆に価値があるということになるかもしれないが……

 とりあえず、いつもの記念すべき土曜日に、正解となったことは素直に祝いたい。やはり我々にとって土曜日はスペシャル・デイ。
 どうなっていくかも全くわからないけれど、一歩は一歩。

 一夜明けた日曜日、午前中に美琴からメールが来た。

《昨日は、本当にありがとう。いろいろ考えてる。夜にまたメールしていい?》

《どうぞ、遠慮なく。なんでも書いてくるがいい、我こそは、そなたを救いし賢者である》

《演技はもういいから。むしろこれからはまぎらわしくなるから、やめてもらった方がいいと思う》

《まぎらわしくなる、ですか?》

《理由があるの。あとで教える。じゃあ、また》

《じゃあまた》
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