第50話
文字数 790文字
美琴とわかれてカズキがむかったのは地方資料コーナー。
その一見わかりやすいネーミングの部屋に、棚いっぱい並んでいるのは、ぶ厚く古い本の数々。シリーズ物が多い。県史シリーズとか、江戸村落記録シリーズとか。
村落記録シリーズのすっかり色あせた背表紙を見たときには「これだ」と思ったカズキだったが、試しに一冊手にとって、中を見てみると「なんだこれ」とあきれるしかなかった。手書きでこそなかったが、明らかに鉛の活字をならべて刷られたもの。文字が縦に少し不ぞろいで、一文字だけゆがんでいたりする。
おおざっぱに地域別に並んでいる目次の量もすごかったが、本文にはその一つ一つに、今で言うwikiふうの説明がたっぷりとなされていた。街道のこと、川や寺社のこと、分離したり合併したりしてきた経緯、産物、小さな集落の名前など。どこもかしこも旧活字のオンパレード、もちろんふりがななんて一つとしてついていない。高校生が読みこなすなんて、とうてい不可能なレベル。
おそらく兎内村は、あるとしたらその列記されている「小さな集落」のほうだろうが、村落記録シリーズ全72巻から、それを見つけろと?
パソコン検索もできない書籍で?
どう考えてもむりじゃね、これ?
たんに物量の問題だけではない。生理的問題もあるのだ。
ろくに読めないものを眺めていたら、それがコノハのためであろうと、ミコさんのためであろうと、容赦なく睡魔は襲って来る。じつは、こういうこともあろうかと、図書館に来る前にのどが渇いたついでにカフェイン満タンのエナジードリンクをコンビニで買って飲んでいたのだが、それとて万全ではない。
一巻の最初の数十ページで、すでに睡魔が……
Ψ( `▽´ )Ψ
こうなったら、最後の手段だ。
幼少の頃にやったRPGの究極魔法を、今こそ、ここに。
パ、パ、パ……
パルプンテ!
……
ユウシャハ ネテシマッタ
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