第二十九話 アスマの首

文字数 2,394文字




ギィ--······



ギギ-····ッ





(本殿の扉が開く·····っ!!)
(····一体何が始まるんだよ···っ!)



そして、そこに出てきたのは···

神主の姿をした般若の如く形相の

鬼だった



っ!!!!!
(····あの鬼は確か)
(····真蛇(しんじゃ)?!)
(·····何か両手にもってるぞ)
 




ウオオオオオオオオオオッッツ!!!





っ!!!!

(っまた、叫び始めたっ!!)

(····手に持っている物は三方···?···の上に何か乗っています···)
(····なに?··よく見えない)
·················
っ!!!!!!!
(······ひっ、人の·········首····?)
っ!!!!!!



そう···、その鬼の手にあるもの··

それは―――――···




三方の上にゴロリと置かれた人の生首だった



(····これ、絶対にヤバいやつじゃねえのか)
····················



結局、グイグイ押された俺達は本殿に向かって丁度中央の最前列にいた····


そこから本殿は割りと近くて、三方の上に乗せられた生首の断面までよく見えていた



(う····っ、うぅ··)
(···ここから抜け出す方法を考えなくては···)
   




···あれ?






(何か変だ····)
(····お、おかしいな··)



さっきまで俺の視界に映っていたモノ··


俺は外から本殿の中を見ていた··

それなのに··


··今は何でレンが··向こう側から俺を見ているんだ?


それも··カナリ青ざめた顔で··



レ、レン····?






ウオオオオオオオオオオッッツ!!!





早ク喰ワセロオオオオオオ!!!


我慢デキネエエエエッッ!!!!







っ!!!!!
(な、何なんだ?! 誰を····喰うって言うんだよ········っ!!)
··················
·····え



もしかして···

今俺は本殿の中にいるのか··?


あっち側は薄暗く、俺はまじまじとレンを凝視する


体を小刻みに震わせながらもギッチリと握ってその手を離そうとはしないレンがそこに立っていた―――――



そして、レンが繋いだその手の持ち主··










俺··?


だが··首が··、無い――――



··俺の体には首が付いていなかったのだ



何·····で···



そうしているうちに俺の体はゆっくりと倒れていった··


レンは俯いたまま目をギュッとつむり、繋がれていた手は、抗うことも敵わず簡単に離されてしまった



そしてその瞬間、レンは大量の百鬼共にまたたくまに囲まれたのだった



····レンっ?!
····アスマさん、今···助け出しますからね
····心配しないで···待ってて···
っ!!!!!



レンは、今にも泣き出しそうな弱々しい口調でそう言った····



レ·····ン···?!
                              

その時·····

レンを囲んでいた百鬼共が、一斉にレンに向かって襲いかかって行った




邪魔な小娘から殺せと叫びながら····




(····こんな数の上級百鬼を相手にするのは無理ですね··)
慶長様····、私は···弱くて情けない··アスマさんを守れないです
····せっかく、楽しい初詣だと思ったのに、こんな場所に迷い混んでしまう始末···
·····ご免なさい
レ····っ  レンっ!!!!
  


レンがまるで諦めたような言葉を口にした、その時だった―――――






グアアァーーーー····


グアアアアアアッッッ!!!!   

ギャアアアアアスッッ!!!!!






それは、凄まじい怒りの感情を吐き散らしたような動物?!の様な叫び声だった



今度は何だっ!?



「唵(オン) 枳里虐(キリギャク)」

「南無毘那臾舎迦(ナムビナユカシャ)」

「訶室胝謨伽沙(カシチィモカシャ)」

「沮姪他(チニャタ)」

「唵蛇臾阿蛇臾訶(オンダユアダユカ)」

「毘那臾訶 毘那臾訶(ビナユカ)」

「蛇羅臾訶(ダラユカ)」

「哩蛇羅臾訶(ハリダラユカ)」

「商伽羯室胝(シャキャギャアシッチイ)

「商伽羯室他(シャキャギャアシッタ)

「扇胝伽羅(センチキャラ)」 


「娑婆訶(ソバカ)」





····更には何処からともなく聞こえてくる真言―――――


一体何がどうなっているんだ?!

っ!!!!!?
な、なぜ真言(しんごん)が····っ?!



ウ··グォアァァアァァッッ!!!


ギィャアァァァアアッッッ!!!!




百鬼共が苦しんでいる···っ?!



フーーーーーーーー·····



フーーーーーー······



·····ワタシのレンに·······

何をしている··········っっ!!!

下級のゲス共がぁぁぁぁっ!!!!!




っ!!!!!

す、凄い断末魔だ······っ!!

ヨ····
ヨーコちゃんっ!!!!!



··息を荒立てたその恐ろしいモノは、真っ白でバカでかい狐のような姿をしている――――



尻尾は九つ有り、口から炎をこぼしながらレンを守らんとばかりに百鬼共を蹴散らしていた··



ヨ、ヨーコ····ちゃん?!



其のとき俺の頭の上でボソッと呟いたのは、俺の頭?を三方に乗せ、抱えたまま

外の現状を平然と見ていた鬼だった··



フフフ····

全く迷惑な話しだ·· なぁ·· 羅刹····

(羅刹·····??)
····················
アスマ······
っ!!!?
貴様は何れにせよワシらに喰われる定め
···············!!
·····今はまだ其のときでは無かったようだが···、また近いうちに会えるぞ··· フフフ
其の短い命を存分に噛み締めておれ···
っ!!!!



そして次の瞬間、おれの意識は本殿の外にあった―――――



えっ?!!
おっ、俺の体は?!



手··がある··· 

胴体も足も··


俺は、ハッとして首の付け根をまさぐった――――


つ、繋がっている··

首が··ある··


一体何が起きたのか全く分からない··

まさか夢って事は無いよな··?


いや、寧ろ夢であって欲しかった――

自分が喰われる定めなんて、薄々分かっていたけど信じたくなんか無かったんだ





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登場人物紹介

名前 伊吹 遊馬(いぶきあすま)

年齢 19歳

身長 179㌢

体重 63㌔

趣味 弓道、スノボ、漫画、小説


本編の主人公。

極度な霊感体質な事から、有りとあらゆる百鬼から命を狙われている。

それ故に、物事を諦める思考のある性格。

レンに興味を持ち始める。

名前 櫻井 蓮(さくらいれん)

年齢 19歳

身長 150㌢

体重 内緒

趣味 お寺巡り、お経早口言葉、御詠歌


本編のヒロイン 

実家はお祓い家業を営んでいる。

アスマを助ける為に自らを犠牲にするが、犠牲とは全く思っていない根っからのお人好し。

名前 伊吹 悠人(いぶきはると)

年齢 35歳

身長 183㌢

体重 68㌔

趣味 カクテルの調合、アンティーク収集、ドリ車の改造


アスマの叔父【para ti 】のオーナー

自分の息子のようにアスマを可愛がっている。

女性関係には少々だらしなく、それ故に婚期を逃して未だに独身。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

身長 165㌢

体重 秘密

趣味 七変化、レンの子守


レンの親友

レンとは相当親しい間柄で、学校ではいつも一緒に過ごしている。

その正体は謎に包まれており誰も知らない。

名前 碓井(うすい)

年齢 33歳

身長 185㌢

体重 75㌔

趣味 車、バイク、バギー、


【Para ti 】のバーテンダー

見た目はヤバいく、口調も荒いが

実は紳士。

特にも女性には優しく、執事より人気が高い。アスマの事も可愛がっている。

名前 湊(みなと)

年齢 30歳

身長 177㌢

体重 62㌔

趣味 コース料理やスイーツの試作、海外で食べ歩き、彼女募集中


【Para ti 】のシェフ&パティシエ

基本的に落ち着いていて物静か。

生まれてこの方、怒った事が無い。

常に食材の事を考えている為、彼女にフラれる事が多い。

名前 ???

年齢 ???

身長 ·············

体重 ·············

趣味 ???


飼い猫のようだが·····?

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)  

年齢 35歳

身長 175㌢

体重 65㌔

趣味 野良猫の保護と世話、読書、創作料理


黒猫マートの店長

スーパーの様な品揃えでありながら、実は24時間営業のコンビニ店長。

猫が大好きでとにかく優しい。何事も猫優先のため彼女が出来ない。

名前 櫻井 梗(さくらいきょう)

年齢 26歳

身長 178㌢

体重 59㌔

趣味 酒を飲む、自然の中で小説を読む、使い魔を従える


レンの兄

お祓い家業を営みつつ、神社の神主を勤めている。霊力が強く百鬼は近づこうともしない。··最近彼女にフラれた。

名前 黒鉄(くろがね)

年齢 630歳

身長 190㌢

体重 78㌔

趣味 佐助の守護、佐助と散歩、佐助と昼寝


佐助の飼い猫(人型バージョン)

630年の時を経て、佐助(黒崎陵)との再開を果たし、今を幸せに暮らしている猫又。超級百鬼であり、百鬼の中でも敵はいない程の強さを持っている。


名前 櫻井 蘭蕉(さくらいかんな)

年齢 30歳

身長 160㌢

体重 秘密

趣味 筋トレ、太極拳、少林寺拳法


レンの姉(長女)

基本おっとりしているが、趣味は大体護身術や体を鍛える事。

仕事はグラフィックデザイナーで、中間管理職。

男性との縁がいつもいまいち。

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