第二十九話 アスマの首
文字数 2,394文字
ギィ--······
ギギ-····ッ
そして、そこに出てきたのは···
神主の姿をした般若の如く形相の
鬼だった
ウオオオオオオオオオオッッツ!!!
そう···、その鬼の手にあるもの··
それは―――――···
三方の上にゴロリと置かれた人の生首だった
そこから本殿は割りと近くて、三方の上に乗せられた生首の断面までよく見えていた
···あれ?
さっきまで俺の視界に映っていたモノ··
俺は外から本殿の中を見ていた··
それなのに··
··今は何でレンが··向こう側から俺を見ているんだ?
それも··カナリ青ざめた顔で··
ウオオオオオオオオオオッッツ!!!
早ク喰ワセロオオオオオオ!!!
我慢デキネエエエエッッ!!!!
もしかして···
今俺は本殿の中にいるのか··?
あっち側は薄暗く、俺はまじまじとレンを凝視する
体を小刻みに震わせながらもギッチリと握ってその手を離そうとはしないレンがそこに立っていた―――――
そして、レンが繋いだその手の持ち主··
俺··?
だが··首が··、無い――――
··俺の体には首が付いていなかったのだ
そうしているうちに俺の体はゆっくりと倒れていった··
レンは俯いたまま目をギュッとつむり、繋がれていた手は、抗うことも敵わず簡単に離されてしまった
そしてその瞬間、レンは大量の百鬼共にまたたくまに囲まれたのだった
レンは、今にも泣き出しそうな弱々しい口調でそう言った····
その時·····
レンを囲んでいた百鬼共が、一斉にレンに向かって襲いかかって行った
邪魔な小娘から殺せと叫びながら····
レンがまるで諦めたような言葉を口にした、その時だった―――――
グアアァーーーー····
グアアアアアアッッッ!!!!
ギャアアアアアスッッ!!!!!
それは、凄まじい怒りの感情を吐き散らしたような動物?!の様な叫び声だった
「唵(オン) 枳里虐(キリギャク)」
「南無毘那臾舎迦(ナムビナユカシャ)」
「訶室胝謨伽沙(カシチィモカシャ)」
「沮姪他(チニャタ)」
「唵蛇臾阿蛇臾訶(オンダユアダユカ)」
「毘那臾訶 毘那臾訶(ビナユカ)」
「蛇羅臾訶(ダラユカ)」
「哩蛇羅臾訶(ハリダラユカ)」
「商伽羯室胝(シャキャギャアシッチイ)
「商伽羯室他(シャキャギャアシッタ)
「扇胝伽羅(センチキャラ)」
「娑婆訶(ソバカ)」
····更には何処からともなく聞こえてくる真言―――――
一体何がどうなっているんだ?!
ギィャアァァァアアッッッ!!!!
フーーーーーーーー·····
フーーーーーー······
·····ワタシのレンに·······
何をしている··········っっ!!!
下級のゲス共がぁぁぁぁっ!!!!!
··息を荒立てたその恐ろしいモノは、真っ白でバカでかい狐のような姿をしている――――
尻尾は九つ有り、口から炎をこぼしながらレンを守らんとばかりに百鬼共を蹴散らしていた··
其のとき俺の頭の上でボソッと呟いたのは、俺の頭?を三方に乗せ、抱えたまま
外の現状を平然と見ていた鬼だった··
全く迷惑な話しだ·· なぁ·· 羅刹····
そして次の瞬間、おれの意識は本殿の外にあった―――――
手··がある···
胴体も足も··
俺は、ハッとして首の付け根をまさぐった――――
つ、繋がっている··
首が··ある··
一体何が起きたのか全く分からない··
まさか夢って事は無いよな··?
いや、寧ろ夢であって欲しかった――
自分が喰われる定めなんて、薄々分かっていたけど信じたくなんか無かったんだ