第五話 露天風呂にて②

文字数 3,718文字





-PM 9時45分-



《法願寺-露天風呂》





(何だ·····?よく見えないけど···)



カタカタッカタ·····

カタカタカタカタカタカタカタカタ



(人··形···?)



カタ···ッカタカタ


グルンッッ

グルグルグルグルグル-···




っ!!!!
(に、日本人形かっ?!)



そう、そこにいたのはさっき住職が話していた呪いの人形だった



カタカタと音を立てながら歩いているようだが、見るからに風呂場の石畳を滑るように移動している。

何処から音が鳴っているのかは全く分らない。



更には自らの首を360度回転させながら動いている事に、気味悪さが倍増していた。




(何で今ここにいるんだよ~···、勘弁してくれ····)
(ってか、何で首回してんだ···)
(··動いてるだけでも気持ち悪いのに、拍車をかけて気持ち悪いぞ····)




カタカタカタカタカタカタカタ




っ!!!!!!!!
(こ、こっちに来るっ!!)





俺は静かに、少しだけお湯の中に潜りながら岩影へと移動した。


・・・この数珠、本当に結界を張ってくれてるのか?                        

全く分からん



                                

もう少し····こう、色が見えるとか何かを感じるとかあってもよくないか


 まじで頼むよ数珠っ!




                      


    







-PM 10時35分-



《法願寺-客間》





····遅い
アスマさん···大丈夫かな··
···でも長湯って場合もありますからね··
(もう少し様子を····)
···········
いや·····

やっぱり見に行こう·····っ!!







《法願寺-露天風呂》





 ガチャ·····                               



ちらっ
アスマさーん······?
無事ですかぁ····?

居るなら返事してください~·····っ



       シーーーーーーーーーーーン·····



いないなんて事は····、ないですよね···?
アスマさ-······
うぅ···
!!!!!!!
だっ、大丈夫ですか?!

入りますよ!

········
·······あ-っ!!!!?



湯煙で視界の悪い露天風呂内を見渡してみると、湯船から上半身を打ち上げた状態で、うつ伏せのままつっぷしているアスマさんを発見した




(グッタリしてる···っ!)
どどどうしたんですかっ?!
··········
(は、反応がありませんっ!!)
え、えっと···っ!!

どうしようっ!!

のぼせてるだけ····?!
取り敢えず、住職様を呼んで·····
い、いや!直ぐにお湯から出さないと·····っ!!
うぅ~···
仕方ありませんっ!
アスマさんっ、引っ張りあげますよ?!
·············
っっっよいしょーーーっっ!!!!



     ズルズルズル-····



                        ッドサッ



はぁっ はぁっ·····っ!
(ビッショビショになってしまった·····)



俺にその瞬間の記憶は殆ど無い··。が、ただ1つ覚えている事がある。


それは・・・レンの膝枕だ

     


レンが俺の両腕を引っ張り、湯船から引き上げた時にどうやらそのまま尻餅を着いたようだ。

 で、そのまま膝枕····



不可抗力ですよ?


                               

                   

っ!!!!!
あわわわっ!!バスタオルっ!



          パサ-···



ふー、危険すぎる····っ!

····うつぶせのまま上げられて良かった··

············
どうやら、のぼせているだけみたいだけど·····、このままで湯冷めしちゃわないかな?
·········
(何かドキドキするな··、何でだろ)
(膝枕のせい····?)
····うぅ··
っ!!!!!!
アスマさん?!

大丈夫ですかっ?!

···っレン···?
·····来て···くれたのか··
直ぐに、住職様を呼んで参りますので····っ
···いや··
え····?
このまま·····、で·· 少ししたら··· 自分で歩けるから··
···ここに居て··欲しい



ごめん、レン···

願わくば、もう少し膝枕を···!!




······
は、はい···
(やっぱり何かあったのかな····)










 -PM 11時00分-



 ボーン ボーン ボーン-·····


       


      


ふっ·····、ふぁ····っ········くしょいっ!
ぐす···っ

(さ、寒い~っ!)

もう12月だからなぁ~····

流石に寒いですね···

(アスマさんが、寒くて死んでしまわないように私の上着もかけたから····余計に寒い··)
······!!!!




           ガバッ!!!




れっ、レンっ!!!!
わっ!!!
ビックリした~·····

だ、大丈夫ですか?

あ···、俺はもうだいぶ良くなったけど···レンが··· 
濡れてんのに、そんな薄着で寒かったろ!?ごめん···っ!
····あ、いえっ、全然大丈夫ですよ!アスマさんを一人にはしておけませんので!
っ!!
とにかく!私は後でも大丈夫ですので、もう一度温まって来てください!
ちゃんと扉の側で待っていますから
····ホントにごめん···
いえ···、気にしないで下さい





                       ガチャ-··· パタン




はぁ~····、情けな····
  


自らレンの膝枕を求めておいて何だが

既に迷惑をかけっぱなしだ··


俺にもレンのような能力があればなぁ、霊感の強すぎる只の凡人だぜ··


··自分で言ってて悲しくなるわ



俺は再度湯船に浸かりながら己の無能さを嘆いていた。












        ガチャ-··· パタン




あ·······っ
お帰りなさい
た、ただいま···
あの···
えっ?
···さっき···、何かあったのですか?あんなにのぼせるまで····
あ····、うん···· 
さっき、住職が話していた呪いの人形だと思うんだけど····、その日本人形が現れて····
··俺は、お湯の中にいたし···そのまま息を潜めてたんだけど、なかなか居なくならなくて···
なんと····っ!
数珠のおかげなのか、見つかる事はなかったけど、そのまま意識不明に···
そ、そうでしたか····

危なかったですね··

(直接的な霊症が無かったために、私の第六感には触れなかったのかな····?)
取り敢えず、今日は一人にならない方が良いかと思いますので···
お部屋に住職様を呼んでおきました
えっ?!
私がお風呂に入っている間は、住職様と一緒に居て下さいね
お、おう····

(住職と二人っきりか~···)

では後程··





                       ガチャ-··· パタン




ふぅ···
···これから、どうしようかな····

学校とか行っている間は····

アスマさんの側にずっといられる訳でもないですしね~···






         チャプ-···· パシャ···





ふぁ~····、湯加減最高か·····っ!
···················
(寝れそうです····)





カタンッ-·····




·····あ、



気持ちよくお湯に浸かっていたのも束の間、さっきアスマさんが話していた呪いの日本人形らしきモノが姿を晒していた









カタンッ カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ





グルグルグルグルグルッッ



グルンッ

·····あ、····あの
ッ!!!!!!!!
ギギッ·····ギギギギギ··
(·········こっちを向いた)
グルンッッッ

グルグルグルグルグルッッ



日本人形はオカッパの髪の毛を振り乱しながら、己の首をグルグルと回している




·······

(威嚇しているようですね··)

···もしかして、貴方は明日来る予定ではありませんでしたか?
··············

アスマアスマアスマアスマ······

·········

オマ·····エ······

アスマヲ···ドコニ···········

カクシタノダ··  コロスコロスコロスコロスッッ

っ!!!!!


····アスマさんはもういませんよ··っ!






次の瞬間、呪いの日本人形は露天風呂の石畳を蹴り、飛び上がった。

そしてその勢いそのままに私の顔に張り付いたのだった






うわっっ!!!!




          ガシッッッ!!!




うぐっっ···!
か、顔に張り付くのは···

やめてください···っ!




      ギリギリギリギリッッ!!!




ぐぅっ····!!

いったたたた······っ!!

いい加減にしないと···っ、怒りますよ?!
アスマハ···ドコダ···· 

ウツリタイ-····· ウツリタイウツリタイウツリタイウツリタイ

そんなこと·····っ させる訳ないでしょ····っ!!!
イワネバ······

コロスノミッッッッ!!!!

!!!




アスマさんがいない事に腹を立てた日本人形は自分の髪の毛を凄まじい勢いで伸ばし始めた





っ!!

か、髪の毛が···っ!!

 


そして伸びた髪の毛は私の首を絞めるがごとく絡みつく




ぐえぇっっ·····!!

(ちょっ、マジで締まってるから!!)

(っこ、このままでは···っ!!)

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登場人物紹介

名前 伊吹 遊馬(いぶきあすま)

年齢 19歳

身長 179㌢

体重 63㌔

趣味 弓道、スノボ、漫画、小説


本編の主人公。

極度な霊感体質な事から、有りとあらゆる百鬼から命を狙われている。

それ故に、物事を諦める思考のある性格。

レンに興味を持ち始める。

名前 櫻井 蓮(さくらいれん)

年齢 19歳

身長 150㌢

体重 内緒

趣味 お寺巡り、お経早口言葉、御詠歌


本編のヒロイン 

実家はお祓い家業を営んでいる。

アスマを助ける為に自らを犠牲にするが、犠牲とは全く思っていない根っからのお人好し。

名前 伊吹 悠人(いぶきはると)

年齢 35歳

身長 183㌢

体重 68㌔

趣味 カクテルの調合、アンティーク収集、ドリ車の改造


アスマの叔父【para ti 】のオーナー

自分の息子のようにアスマを可愛がっている。

女性関係には少々だらしなく、それ故に婚期を逃して未だに独身。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

身長 165㌢

体重 秘密

趣味 七変化、レンの子守


レンの親友

レンとは相当親しい間柄で、学校ではいつも一緒に過ごしている。

その正体は謎に包まれており誰も知らない。

名前 碓井(うすい)

年齢 33歳

身長 185㌢

体重 75㌔

趣味 車、バイク、バギー、


【Para ti 】のバーテンダー

見た目はヤバいく、口調も荒いが

実は紳士。

特にも女性には優しく、執事より人気が高い。アスマの事も可愛がっている。

名前 湊(みなと)

年齢 30歳

身長 177㌢

体重 62㌔

趣味 コース料理やスイーツの試作、海外で食べ歩き、彼女募集中


【Para ti 】のシェフ&パティシエ

基本的に落ち着いていて物静か。

生まれてこの方、怒った事が無い。

常に食材の事を考えている為、彼女にフラれる事が多い。

名前 ???

年齢 ???

身長 ·············

体重 ·············

趣味 ???


飼い猫のようだが·····?

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)  

年齢 35歳

身長 175㌢

体重 65㌔

趣味 野良猫の保護と世話、読書、創作料理


黒猫マートの店長

スーパーの様な品揃えでありながら、実は24時間営業のコンビニ店長。

猫が大好きでとにかく優しい。何事も猫優先のため彼女が出来ない。

名前 櫻井 梗(さくらいきょう)

年齢 26歳

身長 178㌢

体重 59㌔

趣味 酒を飲む、自然の中で小説を読む、使い魔を従える


レンの兄

お祓い家業を営みつつ、神社の神主を勤めている。霊力が強く百鬼は近づこうともしない。··最近彼女にフラれた。

名前 黒鉄(くろがね)

年齢 630歳

身長 190㌢

体重 78㌔

趣味 佐助の守護、佐助と散歩、佐助と昼寝


佐助の飼い猫(人型バージョン)

630年の時を経て、佐助(黒崎陵)との再開を果たし、今を幸せに暮らしている猫又。超級百鬼であり、百鬼の中でも敵はいない程の強さを持っている。


名前 櫻井 蘭蕉(さくらいかんな)

年齢 30歳

身長 160㌢

体重 秘密

趣味 筋トレ、太極拳、少林寺拳法


レンの姉(長女)

基本おっとりしているが、趣味は大体護身術や体を鍛える事。

仕事はグラフィックデザイナーで、中間管理職。

男性との縁がいつもいまいち。

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