第二十二話 唯一無二の存在
文字数 3,338文字
12月23日(日)
-PM 9時50分-
《黒猫マート》
今日はホールケーキの販売もやってるけど、もう食べた?
成る程、そう言えばアスマ君はスイーツ男子だったね!
(アスマさんのスイーツ男子っぷりは有名なようですね···)
まだ若いのに一軒家を持っているとか··
サスガは店長さんだ!
しかも··これは新築っっ!!
男のロマンである新築··
羨ましい~!!
容姿も良くて、店長さんで、性格も優しくて、一軒家持ってるとか···
わっ!!
黒鉄···、いつからそこにいたんだよ···
えっ?!いくらなんでも舌を火傷してしまいますよ?!
····珈琲を飲むときは、人の姿になるだけだ··佐助の珈琲は旨いからな··
(人の姿にもなれるのかよ····、てか猫が珈琲って)
···俺と、黒鉄の出会いは····ずーーーっと昔昔の事なんだけどね
俺は、見ての通り35歳だけど、黒鉄の年齢は約630歳だよっ
もしかして····、元々は普通のニャンコだったのですか···?
正しくは、黒鉄を認識したことで、記憶が甦ったって所かな··
(何かを切っ掛けに、前世の記憶が戻ると言う話は、確かに聞いたことがあります···)
····黒鉄が、猫又になってしまったのは···俺のせいでね···
佐助····、それはもう良いと言っているだろう···
いやぁ·····、本当に可哀想な事をしたと思ってる···
···黒鉄は、元々何も知らない普通の猫で、とにかく人懐っこかったんだけど···
俺が黒鉄と出会ったのは、黒鉄が木にくくりつけられている時で···
····そう言う人もいるんだよね
今も昔も変わらない
そして、その時代はとても治安が悪くて、世の中は戦だらけでね
····木にくくりつけられている黒鉄を見付けて俺はそれを解いたんだけど···
あれほど人に酷いことをされても尚、黒鉄は俺にくっついて離れなくて
もう、可愛いし可愛いし可愛いから飼うしかないでしょ?
当時俺は、蕎麦屋で蕎麦打ちの仕事しながら長屋に住んでてさ
長屋の隣人のお松さんが、うるさかったけど、ガン無視して黒鉄と一緒に暮らしたよ
(長屋って、仕切って沢山の世帯が住めるようになってる細長い建物だっけ)
俺はその日、いつものように仕事に行ってたんだけど、
たまたま客入りが多くて、なかなか帰れない状況だったんだ····
佐助さん、もう外は真っ暗だからね、帰りは気を付けて行くんだよ
戦は終盤とは言え、まだまだ物騒な世の中だね····
それじゃあ女将さん、今日の分に間に合いそうなくらいの蕎麦は打っておいたから、
あんたの隣の佐助さんっ!!
昨日から帰ってないんだよ!!
ニャッ···· ニャァ······
(違うんかい···)
何だい?佐助さんは黒鉄を置いて何処に行っちまったんだい···
蕎麦屋にも来てなくてね····
黒鉄、知らないかい?
黒鉄····、腹減ったろ?
何か作ってやろうか····
あっ!!
黒鉄っ、何処行くんだい······っ!!!
ニャーーーーーーーー!!!
(佐助どこーーーーっ!)
キョロキョロ-···
ヒクヒク-··· クンクン···
ニャアアアーーーーーーーー!!!!
(見付けたっ!)
ニャーーーーーーーー!!!!
(佐助っ!佐助っ!!)
ニャーーーーーーーー!!!!
(起きろ佐助ーーー!!)
遺体が戻ってきただけでも·····
ましな方だよお松さん····
黒鉄、佐助さんの遺体だってね···ずっとここに置いとく訳には行かないんだよ···
····辻斬りなんてのはね、刀が斬れるかどうかを確かめたいだけなんだ····
そんな事の為に、関係ない人間を斬るなんて···!あんまりじゃないか···っ!
····佐助さんの····、遺体はどうするんだい···?
さあて····無事に埋葬も済んだし、お経もあげてもらったから
黒鉄······気が済んだら、いつでもうちの蕎麦屋においでな····
だがその後、黒鉄がうちに来ることは無かった
あのまま·····、佐助さんの墓の前でうずくまったまま――――――
いつしか黒鉄もまた····死んでいた
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