第二十八話 初詣の怪

文字数 2,689文字








    12月31日(月)

-PM11時20分-


 《アスマ自宅》


あ····、もうこんな時間なんだ··
なんか、楽しいと時間はあっという間ですね~
黒毛和牛めっちゃうまかったし、レンの手料理は相変わらずのクオリティで···
····あ、有り難うございます
レンのお兄さんにも感謝だね!
まぁ、そうですね~
もう少ししたら、出掛けようか
はい!



今年はかなり贅沢な年越しだ··


何たってレンがいるからな!

しかも黒毛和牛だったし!


年の最後に一気に運が上昇したぞ··

それって逆に今からが不安になるよな··


取り敢えず、数珠を握りしめながら初詣に行こう···



そう言えば、レンの上着薄くない?
ちょっと····思ったよりも寒かったです
じゃあ、俺の上着貸してあげるから暖かくして行こう?
ドキッ
·····はぃ








《アスマ自宅周辺》


~~っ!

やっぱ外は寒いなぁっ

寒いですねー!

でもアスマさんの上着めっちゃ暖かいです!

っ!!!
それは、良かった····!
·····さあ、半径1㌔を過ぎたら何時もの如くお覚悟ですよ?!
うん····、今日は人もごった返してるだろうし、沢山いるかもしれないな
取り敢えず、近くの七幡宮へ参りましょうか?
だな!



七幡宮神社···

この辺では一番デカイ神社なのだが、凄い高台に建っていて神社に着くまでが体力勝負って言う···、ある意味曰く付きの神社だ


何段の石段があるのか分からないが、全部数えると必ず一段増えてるって都市伝説もある


まぁ···、所詮は都市伝説!

増えたから何だって話だ

俺からしたらそのくらい大歓迎だっつーの!



それにしても····
どうしました?
まさかこんな時間に初詣に行けるとは思ってなかった···
そうですね~、アスマさんの場合、こんな時間に初詣なんてしたら簡単に食べられちゃいますねぇ
笑顔で言うことか···
ふふ、私がそんな事させませんから安心して下さい
有り難う、レン···




-·····ヒソ





···········っ






ヒソヒソヒソヒソ-····





アスマ···アスマガオルゾ···




ヒソヒソ-···






ナンテ イイニオイ····


ウマソウ ウマソウ タベタイ タベタイ-···




ヒソヒソ···





ギクッ
····大丈夫です、夜中でも低級は我々に手を出すことは出来ませんから
それよりも、鳥居の中からが問題なのです
と、鳥居?
ええ···、境内は神の領域ではありますが、百鬼もまた住み着いています
加えて、人だかりとなれば紛れ込んで居ることこの上なしでしょう
やっぱ····帰ろうかな···
·····夜明けにしましょうか?
(ここまでレンを付き合わせておいて·····)
無理して挑戦しなくても良いのですよ?
お、俺は····初めての年越し初詣をレンと行きたくて···
え······、···っと······
では、こうしましょう···
········?
アスマさんは数珠を右手に着けて、私は左手に着けます
そ、それから?
えっと····、手を繋ぐ····だけです
·······えっ?!
ふっ、深い意味は無いんですよ?!

ただっ、これは私達の回りに結界が出来るんです!

そうすれば、上級以上の百鬼からでも見えなくなるはずです····
···············
元々アスマさんの数珠は、私の魂で出来ていますから···
それに合わせて、ご先祖様の霊力を上乗せすれば怖いものなし!

(な、はず···)

そりゃあもう····、行くしかないでしょ!
は、はい···







       12月31日(月)

  -PM 11時45分-


《七幡宮-鳥居前》


····よしっ!

行くか····!

はい!
·····で、では····手を····
···はい


カップルが手を繋ぐ場合のセオリーって····、やっぱ男から握る··

だよな···?!


いや、カップルじゃないんだけども!


···まぁ、今回はそんな深い意味など持たない手繋ぎだ


うん

遠慮なく行かせてもらおうか








ギュ····




っ!!

手ぇ冷たっ!

····凄い冷えてるぞ

寒かった?

手袋してなかったので···、手だけやたら寒かったです···
ポケットに入れとけばよかったのに···
でも····、アスマさんの手がとても暖かいので···
っ!!!!
お風呂に入ってるみたいです!
······そんなに?
とても暖まりました!
よーし!

じゃあ行くぜいっ

行きましょう!



·············



····················




それから暫く登り、ようやく境内が見えてきた


思った以上に石段が多くて年明けに間に合わないんじゃないかと思ったが··何とかなったらしい··



マジキツイぜ····!



ゼエゼエ····

(運動不足だな~···)

······大丈夫か?レン
·····ハァハァ···

なんとか····

····年明けに間に合って良かったですねっ
だな····

····めっちゃ人だかりが出来てんな~··

····しょうがない、並ぶか



そう言って、境内に足を踏み入れたその瞬間····



俺達の背筋は凍った····






っ!!!!!
················!!!!!



そこには沢山の人間の···

半透明な黒い影···と、着物を纏った百鬼と呼べるモノ達の集団が待っていた····



(な·····んだよこれ····)
(アスマさん····、喋ってはいけません)
(···紛れ込むとかのレベルじゃないぞ)



俺達はこっそり引き替えそうかと思ったが、後ろからは続々と百鬼達が登って来ていたため、その隙を縫うことは不可能だった




これは··、一体なんだ?

何が起きているのか全く理解出来ない



(·······うおっ)



そんな時、見えているのか見えていないのか、百鬼共は俺たちをグイグイと前へ前へと押し出そうとしているとしか思えないくらい、どんどん前へ押されていた






ザワザワ···  グイグイッ



(めっちゃグイグイ押されるぞ···っ!)
(中央に押されている···っ!)
(み、見えていないはずなのに·····)
(これは····かなりマズイんじゃないのか···?)
チラッ

(レンの表情が物語っている····)




ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ




っ!!!!
(なっ、何だ?!····太鼓の音····?!)






ウオオオオオオオオオオッッッ!!!

ウオオオオオオオオオオオッッッ!!!

ウオオオオオオオオオオオオッッッ!!!





(·····うわあっ!!何だよ?!)
(····百鬼達が叫び始めたっ!!)
  


ギギ-····ッ




ギィ--···





···百鬼共の雄叫びに面食らっていると、今度は何がか軋むような音が聞こえてきた――――――



っ!!!!
(本殿の扉が····開くっ!!)
(····アスマさん、絶対に手を離してはいけませんよ!)
(一体···、何が始まるんだ·····っ!!)
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登場人物紹介

名前 伊吹 遊馬(いぶきあすま)

年齢 19歳

身長 179㌢

体重 63㌔

趣味 弓道、スノボ、漫画、小説


本編の主人公。

極度な霊感体質な事から、有りとあらゆる百鬼から命を狙われている。

それ故に、物事を諦める思考のある性格。

レンに興味を持ち始める。

名前 櫻井 蓮(さくらいれん)

年齢 19歳

身長 150㌢

体重 内緒

趣味 お寺巡り、お経早口言葉、御詠歌


本編のヒロイン 

実家はお祓い家業を営んでいる。

アスマを助ける為に自らを犠牲にするが、犠牲とは全く思っていない根っからのお人好し。

名前 伊吹 悠人(いぶきはると)

年齢 35歳

身長 183㌢

体重 68㌔

趣味 カクテルの調合、アンティーク収集、ドリ車の改造


アスマの叔父【para ti 】のオーナー

自分の息子のようにアスマを可愛がっている。

女性関係には少々だらしなく、それ故に婚期を逃して未だに独身。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

身長 165㌢

体重 秘密

趣味 七変化、レンの子守


レンの親友

レンとは相当親しい間柄で、学校ではいつも一緒に過ごしている。

その正体は謎に包まれており誰も知らない。

名前 碓井(うすい)

年齢 33歳

身長 185㌢

体重 75㌔

趣味 車、バイク、バギー、


【Para ti 】のバーテンダー

見た目はヤバいく、口調も荒いが

実は紳士。

特にも女性には優しく、執事より人気が高い。アスマの事も可愛がっている。

名前 湊(みなと)

年齢 30歳

身長 177㌢

体重 62㌔

趣味 コース料理やスイーツの試作、海外で食べ歩き、彼女募集中


【Para ti 】のシェフ&パティシエ

基本的に落ち着いていて物静か。

生まれてこの方、怒った事が無い。

常に食材の事を考えている為、彼女にフラれる事が多い。

名前 ???

年齢 ???

身長 ·············

体重 ·············

趣味 ???


飼い猫のようだが·····?

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)  

年齢 35歳

身長 175㌢

体重 65㌔

趣味 野良猫の保護と世話、読書、創作料理


黒猫マートの店長

スーパーの様な品揃えでありながら、実は24時間営業のコンビニ店長。

猫が大好きでとにかく優しい。何事も猫優先のため彼女が出来ない。

名前 櫻井 梗(さくらいきょう)

年齢 26歳

身長 178㌢

体重 59㌔

趣味 酒を飲む、自然の中で小説を読む、使い魔を従える


レンの兄

お祓い家業を営みつつ、神社の神主を勤めている。霊力が強く百鬼は近づこうともしない。··最近彼女にフラれた。

名前 黒鉄(くろがね)

年齢 630歳

身長 190㌢

体重 78㌔

趣味 佐助の守護、佐助と散歩、佐助と昼寝


佐助の飼い猫(人型バージョン)

630年の時を経て、佐助(黒崎陵)との再開を果たし、今を幸せに暮らしている猫又。超級百鬼であり、百鬼の中でも敵はいない程の強さを持っている。


名前 櫻井 蘭蕉(さくらいかんな)

年齢 30歳

身長 160㌢

体重 秘密

趣味 筋トレ、太極拳、少林寺拳法


レンの姉(長女)

基本おっとりしているが、趣味は大体護身術や体を鍛える事。

仕事はグラフィックデザイナーで、中間管理職。

男性との縁がいつもいまいち。

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