第三十八話 レンのバレンタインチョコ後編
文字数 2,827文字
2月14日(木)
-AM 8時15分-
《デザイン専門学校》
(結局、義理チョコしか持って来れませんでした···)
何で義理チョコ抱えながらそんなに憂鬱そうなのよ···
と、言う訳でして···
折角バイトを休んでまで作ったと言うのに
そりゃぁ···、気の毒にとしか言いようがないけどさぁ
あんたの大好きなアスマ君に、同じ想いを抱いている女の霊が同調して、そのチョコを自分の物だと思ったのね
わ、私がアスマさんの為に作ったチョコをシレッと何処ぞの女性霊がアスマさんに渡す気ですと?!
っ!!!!
ちょっ、ちょっとぉ!そんなことで泣くんじゃないよ~···っ
(アスマ君、後で説明するからまた後でおいで···)
(レンに私の狐うどんを注文させている間にアスマ君へ説明を···)
まあ、そう言う事だから女性霊が来たら知らんぷりして受け取ってね
それから、今私が話したことは聞かなかった事にしてレンには接して欲しいの
あれ?
ヨーコちゃんがいません···
狐うどん伸びちゃいます
それにしても····
その女性霊を探さなくては···
やはり返して貰いたい私のガチチョコ!
とは言え授業もありますし、休憩時間だけで探し出すのは無理···
て事は、女性霊がアスマさんに渡す瞬間しか捕まえる事が出来ません
今日は常に目を光らせておかねば!
-PM 4時30分-
《グラフィックデザイン科》
キーンコーン カーンコーン
教室の扉の影に女の子のシルエットが見える··
良輔には普通の人間に見えたんだろうか·
(グラフィックデザイン科って、生徒さんが多くてアスマさんを探すのも大変です)
あ~····、アスマならさっき女の子に呼ばれて出ていったよ
多分···、屋上に行く階段の方に行ったと思うんだけど
はい·····、突然呼び出してしまってごめんなさい
ちょっ、ちょっと待···っ
な、なんでレンが?! えっ?!
私···、ずっと貴方の側にいました··
いつかこの想いを伝えたくて
貴方の為に、想いを込めて作ったんです··· どうか私の想いを受け取って下さい
そう言ってグイッと押し付けられたその贈り物は···、まさにレンが好きそうな柄で可愛らしいラッピングがされたチョコ?だった···
全くもってレンにそんな事を言わせたような気持ちになってしまい、心臓がズキズキした···
嬉しい···、じゃあ私とお付き合いして下さるのですね!
(どっちがどっちか分からなくならんようにしないと····)
な、何を言っているのですか?!
私のガチチョコ返して下さい!!
彼とお付き合いをするのは私です
このチョコは私が心を込めて作った物ですよ?邪魔しないで下さい
私の気持ちとシンクロし過ぎて、自らが櫻井蓮だと思い込んでしまっている
···違う、わたしは櫻井蓮··
彼の事が···好き···で··
彼、の名前が分からないでしょう?
貴方は本当は彼の事を知らないのですから
わ、私は····
彼の事が好きだった··· 今となっては··誰の事だったのかも分からない
で、でも···想いを伝えたい
バレンタインデーに想いを伝えるつもりだったのに··
貴方の気持ちは分かりました···
では、そのチョコは貴方に差し上げますので
··ちゃんと想いを伝えて輪廻転生をし、来世で新しい恋を見付けると約束して下さい
彼女はそう言って、笑顔で泣きながら徐々に消えていった···
これが成仏ってやつなのか?
眩しいくらいにキラキラしていて···こんな優しい嘘も時には必要なんだと思わされた瞬間だった···
その、チョコは一応私が作りました
(中身は焼き菓子だけど)
ちゃんとした形で渡せませんでしたが、心を込めて作ったつもりです··
(心を込めてって所···もっかい言ってくんないかな)
(何とか、帰宅後のお裾分けチョコにならずに済みました···)
でも···バレンタインデーがこんなにも疲れるものだとは知らなかったな··
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