第一話 出会い
文字数 2,976文字
ー PM 4時44分 ー
1番線に電車が参ります··
お乗りの際は、白線の内側までお下がりください··
···カタンカタン-···· カタンカタン-····
ザワザワ―――···
ふと、誰かに見られているような視線を感じた
ズルズル····
ここは駅の構内だ。
もう少しで外へ出られると言うのに···
今、俺の目の前ではズルズルと蠢いている何かがいる。
影···のようにも見えるが実際は何かしらの怨念だったり、ドス黒い感情だったりするモノなのだろう
今の時間帯、割と多くの人達が行き交っている
しかし誰もアレらを気に留めない
誰にも見えていないのだ
··ヒャヒッ ·····
キヒヒャヘァ~····
コッチ二···コイ···アスマァ···
ズルズル····
イッ···ショ··ニコイ·····
ズル····
···············
俺の名前は伊吹遊馬 (いぶきあすま)
子供の頃から霊感体質で、妖怪心霊の類いに絡まれ続けて生きてきた··
最近では症状が悪くなる一方で··
死にかける事なんてざらにある
今日も本当は大切な用事があったんだ
でも、この調子だと待ち合わせ時間にはもう間に合わないだろう
って言うレベルの問題でも無くなってきたな
今回はどうやらもうダメかもしれない··
ズルズル····
ハヤク·····コォイ···アスマァ
スタスタスタ
··声が出ないっ!!
意識も、もう無くなりそうだ。
例え声が出て、助けを呼んだとしてもどうせ誰にも見えてないんだ··
助けてなんか··もらえる訳がない··
所詮、俺の人生なんて大したもんでも無かったし·・・
流石に疲れてきたな
なんて考えていたその時だった··
俺の意識に飛び込んできたのは
女の子の優しい声だった
そう言って、その女の子は俺の手を優しく握った···
その手の温もりは、心まで温まるような··そんな不思議な感覚だった。
ア~スマァ~····
コッチニイ·····コォイ····イイイ····
ズル···ズル····
そう言って、彼女は俺の手を引き
猛烈ダッシュを始めたのだった··
必死で走っていたせいか気付くと駅の外にいた··
彼女は、大慌てで手を離した
顔を真っ赤にして··
守護霊··
それはまぁ何となく分かるが、術(すべ)ってのは何だ··?
··なかなか不思議な女の子と出会ってしまった気がするぞ··
と、思っていた時··
··正直
そんなもんで今までの苦悩が収まるとは到底思えない··
俺の体験上、この体質は異常なのだから··
やっべ··
心の声が顔に出ていたようだ··
俺は思わずレンの言葉を遮った
何故なのかは自分でもよく分からない···
兎に角、俺は··このままレンと別れたくは無かった
···········
何故かレンは、またしても顔を赤くしている··
俺··、何かしたか··?
こうして俺は、ちょっと不思議な女の子
レンに命を救われ、今まで誰にも理解されなかったこの異常な体質も何とかなるのかもしれない··
と少し期待をしてレンと行動を共にする事にした··