第53話 【ネタバレ御免】漫画『宝石の国』へのあふれる思い
文字数 2,297文字
注意:
ガッツリネタバレします。それから私特有の思い違いをしているかもしれません。
読み流してください。
そして、これから『宝石の国』を読む予定の方は引き返して!
*****
お彼岸で実家に行ったときのこと。
息子と甥っ子が「呪術廻戦は、ほぼハンタだから面白い」とか話していたので、私もそこに加わり『宝石の国』にハマっていると話したところ、
息子:ちゃんと読んだことないけど凄いらしいよね。
甥っ子:たまに(SNSで)見かけるけど、どういう話なの?
私:えーっとね、簡単に言うとね、
地球に隕石が降り、人間は滅亡し、骨と魂と肉に分かれた。
骨は宝石、壊れやすいけど修復ができて不死身、地球にいる。
魂は成仏されないまま月に行って月人になった。
肉は、なんか……クラゲ?海にいる。
博士が死ぬ前に魂を成仏させる「機械」としての『金剛』を作った。
けど金剛が仕事をしなくなったので、月にいる公務員エクメア(エンマ)が、金剛を起動させる目的で、金剛が大切にしている宝石たちを襲撃して破壊し強奪する。
実は金剛は壊れているんだけどね。
私は身振り手振りまじえて熱弁した。
息子:(呆れかえったように)すごくネタバレしちゃったね。
甥っ子:でもネタバレしても、ぜんぜん意味がわからない!
息子:絵がさ、ちょっと不思議だよね。
私:あのね! パッと見、線が細くてヒラヒラしているように思うけど、構図、光と影、宝石の輝き、透明度が見事なんだよ。月人襲来なんて来迎図。それから宝石が男でも女でもない、その造形がいい。
甥っ子:主人公は誰なの?
私:フォス(フォスフォフィライト)っていう弱い宝石が主人公なんだけど、「ハチワレのいない”ちいかわ”」。
甥っ子:それ大変だね。
私:頭すげ変えて102年くらい眠るし、仲間に体をバラバラにされて220年くらい経っちゃうし、金剛の記憶をダウンロードし解脱するため、1万年くらい地上にひとり取り残されちゃう。悲惨。
宝石の仲間たちは月で月人たちと一緒にハッピーライフを送っていて、解脱した主人公に全員成仏させてもらう。ベースに仏教がある。
止まらなくなった私。
私:それから薄荷 色で希少宝石だった主人公が、手足や頭をすげ変え、変容して狂っていくから、主人公の一貫性や成長譚が好きな人はダメかも。あ、仲間たちも月人との戦いで破壊されどんどん代替わりする。
主人公が狂っていく過程が、エクメア(エンマ)の策略で「人間」になる過程というわけで。人間になりつつあるフォスが醜くなっていくのも、こう、クるんだよね。
ああ、だめだ、ぜんぜん説明できない。説明できる気がしない。
好き嫌いあるからお勧めしない。でも今まで読んだ漫画の中で一番、好き。
(思いが溢れ出してしまい当惑)
息子・甥っ子:ぜんぜんわからない(困惑)
*****
『宝石の国』で印象に残っているシーンは山ほどありますが、そのうちの一つ。
フォスが月人に頭を奪われ、代わりに保管してあったラピスラズリ(首から下は月人に奪われた)の頭部を接合し、102年後に目覚めたときのシーン。
「
と、日の光に手をかざしてしみじみ眺めるシーン。
フォスの初期設定は、「
それが頭脳明晰なラピスラズリの頭部を得て、馴染んだときの感慨が「よく見える」。
フォスは発達障害だった? と、そのとき感じたんですよね。ADHDのような。
私は賢い人の特徴は「よく見える」ことだと思っていて。
金剛(先生)がフォスにできる仕事として「博物誌」の編纂を与える。
でもそんな地味で根気のいる仕事にフォスは興味がわかず、そして自分の硬度を顧みず、身の程知らずに派手に戦うことばかりを望む。衝動的で落ち着きがない。
そしてフォスは「みんなのために」と行動するけど、それがあまり仲間に理解されない。
元相棒からは(軽口めいてはいるが)「
もしかして、良かれと思って起こした行動が強引で身勝手と捉えられている?
やはりフォスはADHDっぽい……
最新刊でフォスとかつての宝石の仲間たちが戦って、一人ずつフォスに砕かれてしまうんだけど、みんなが死に際(仮死際?)にフォスへ送る言葉が、優しくて胸打たれる。
でもフォスはそのとき狂っていてさ……
ああ! タンポポの綿毛!!
「
第1話に出てきたよね……単行本、三巡したからわかるよ。
まさか1話書いたとき、93話頃伏線回収するって決めてなかったよね? 市川先生、さすがに後付けだよね?
そしてエクメア(エンマ)がラピスラズリ頭部接合後の変容について、
と語るところが怖い。
飛躍的に賢くなって自分の境遇を認識し、頂点から急降下して、結果、以前の自分より知能が大幅に減退してしまう(そして途中からそれを認識できない)、恐怖SF小説『アルジャーノンに花束を』めいている。
祈りのための機械『金剛大慈悲晶地蔵菩薩』の今までのデータを保存した右目。
それを取り出すためだけに、何万年も用意周到で残酷な仕掛けが組まれていた?
そんなところは、カートヴォネガットジュニア『タイタンの妖女』味があるんだよ……
ネットでは市川先生は、「手塚治虫の『火の鳥』を食べた」と言われている。
(私は残念ながら、『火の鳥』は履修していない)
最新刊ラストでフォスはもう人の形をしていない。
フォスの祈りで、仲間はみんな成仏し輪廻の輪から解放された。
でもまだ最終回ではない。
市川先生ぇ……
ガッツリネタバレします。それから私特有の思い違いをしているかもしれません。
読み流してください。
そして、これから『宝石の国』を読む予定の方は引き返して!
*****
お彼岸で実家に行ったときのこと。
息子と甥っ子が「呪術廻戦は、ほぼハンタだから面白い」とか話していたので、私もそこに加わり『宝石の国』にハマっていると話したところ、
息子:ちゃんと読んだことないけど凄いらしいよね。
甥っ子:たまに(SNSで)見かけるけど、どういう話なの?
私:えーっとね、簡単に言うとね、
地球に隕石が降り、人間は滅亡し、骨と魂と肉に分かれた。
骨は宝石、壊れやすいけど修復ができて不死身、地球にいる。
魂は成仏されないまま月に行って月人になった。
肉は、なんか……クラゲ?海にいる。
博士が死ぬ前に魂を成仏させる「機械」としての『金剛』を作った。
けど金剛が仕事をしなくなったので、月にいる公務員エクメア(エンマ)が、金剛を起動させる目的で、金剛が大切にしている宝石たちを襲撃して破壊し強奪する。
実は金剛は壊れているんだけどね。
私は身振り手振りまじえて熱弁した。
息子:(呆れかえったように)すごくネタバレしちゃったね。
甥っ子:でもネタバレしても、ぜんぜん意味がわからない!
息子:絵がさ、ちょっと不思議だよね。
私:あのね! パッと見、線が細くてヒラヒラしているように思うけど、構図、光と影、宝石の輝き、透明度が見事なんだよ。月人襲来なんて来迎図。それから宝石が男でも女でもない、その造形がいい。
甥っ子:主人公は誰なの?
私:フォス(フォスフォフィライト)っていう弱い宝石が主人公なんだけど、「ハチワレのいない”ちいかわ”」。
甥っ子:それ大変だね。
私:頭すげ変えて102年くらい眠るし、仲間に体をバラバラにされて220年くらい経っちゃうし、金剛の記憶をダウンロードし解脱するため、1万年くらい地上にひとり取り残されちゃう。悲惨。
宝石の仲間たちは月で月人たちと一緒にハッピーライフを送っていて、解脱した主人公に全員成仏させてもらう。ベースに仏教がある。
止まらなくなった私。
私:それから
主人公が狂っていく過程が、エクメア(エンマ)の策略で「人間」になる過程というわけで。人間になりつつあるフォスが醜くなっていくのも、こう、クるんだよね。
ああ、だめだ、ぜんぜん説明できない。説明できる気がしない。
好き嫌いあるからお勧めしない。でも今まで読んだ漫画の中で一番、好き。
(思いが溢れ出してしまい当惑)
息子・甥っ子:ぜんぜんわからない(困惑)
*****
『宝石の国』で印象に残っているシーンは山ほどありますが、そのうちの一つ。
フォスが月人に頭を奪われ、代わりに保管してあったラピスラズリ(首から下は月人に奪われた)の頭部を接合し、102年後に目覚めたときのシーン。
「
なんか ちがう
なんていうか 細かいところまで
気持ち悪いほど
よく見えるなあ……
」と、日の光に手をかざしてしみじみ眺めるシーン。
フォスの初期設定は、「
脆弱な体に不釣り合いな承認欲求だけを抱え
」「空虚な存在だった
」。それが頭脳明晰なラピスラズリの頭部を得て、馴染んだときの感慨が「よく見える」。
フォスは発達障害だった? と、そのとき感じたんですよね。ADHDのような。
私は賢い人の特徴は「よく見える」ことだと思っていて。
金剛(先生)がフォスにできる仕事として「博物誌」の編纂を与える。
でもそんな地味で根気のいる仕事にフォスは興味がわかず、そして自分の硬度を顧みず、身の程知らずに派手に戦うことばかりを望む。衝動的で落ち着きがない。
そしてフォスは「みんなのために」と行動するけど、それがあまり仲間に理解されない。
元相棒からは(軽口めいてはいるが)「
おまえ薄情だもんな
」と呟かれる。もしかして、良かれと思って起こした行動が強引で身勝手と捉えられている?
やはりフォスはADHDっぽい……
最新刊でフォスとかつての宝石の仲間たちが戦って、一人ずつフォスに砕かれてしまうんだけど、みんなが死に際(仮死際?)にフォスへ送る言葉が、優しくて胸打たれる。
でもフォスはそのとき狂っていてさ……
ああ! タンポポの綿毛!!
「
なにか 思い出せそうだったのに
」第1話に出てきたよね……単行本、三巡したからわかるよ。
まさか1話書いたとき、93話頃伏線回収するって決めてなかったよね? 市川先生、さすがに後付けだよね?
そしてエクメア(エンマ)がラピスラズリ頭部接合後の変容について、
「ほどよい賢さは猛毒だ」
と語るところが怖い。
飛躍的に賢くなって自分の境遇を認識し、頂点から急降下して、結果、以前の自分より知能が大幅に減退してしまう(そして途中からそれを認識できない)、恐怖SF小説『アルジャーノンに花束を』めいている。
祈りのための機械『金剛大慈悲晶地蔵菩薩』の今までのデータを保存した右目。
それを取り出すためだけに、何万年も用意周到で残酷な仕掛けが組まれていた?
そんなところは、カートヴォネガットジュニア『タイタンの妖女』味があるんだよ……
ネットでは市川先生は、「手塚治虫の『火の鳥』を食べた」と言われている。
(私は残念ながら、『火の鳥』は履修していない)
最新刊ラストでフォスはもう人の形をしていない。
フォスの祈りで、仲間はみんな成仏し輪廻の輪から解放された。
でもまだ最終回ではない。
市川先生ぇ……