第58話 『孤独と孤立 自分らしさと人とのつながり』覚え書き

文字数 2,027文字

 午前中に読んだブックレット
孤独と孤立 自分らしさと人とのつながり Social Isolation & Loneliness』
(編者:松本俊彦)(日本看護協会出版会)の覚え書きです。


 コロナ禍は社会に内在していた孤独・孤立の問題を深刻化させる契機となりました。
自殺者、DV、虐待、不登校の増加など。

 コロナ禍により、他者との関わり合いが脆弱になったため ”孤独” を抱える子どもたち。
劣悪な環境の家庭では、ステイホームが地獄になってしまうケースも。
 今回、子どもに焦点を当ててピックアップします。

 松本俊彦氏と國分(こくぶん)功一郎氏の対談から。

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松本
子どもたちに「助けを求めようね」とか「カウンセリングルームにはスクールカウンセラーがいるよ」「保健室で先生が対応してくれるよ」と言っても、つながってほしい子たちはアクセスしないんですよね。その代わり、意外なものに救われている気がする。
(略)
統計を見るとコロナ禍によって児童・生徒の自殺は増加しています。休校のせいで増えたのかと思いましたが、学校が再開しても減らなかった。
しかし、部活や遠足などの行事が再開されると少し落ち着いたりする。

放課後に友だちとふざけたり、帰りに寄り道したり、掃除の時間に先生と話したりといった名前のないかかわりで救われている人はいるようです。
孤立から救うための仕組みではなくても、「何となくの接触」が実は孤立を癒している。


國分
フォーマルに用意されたカウンセリングルームなどではなく、インフォーマルな交流が実は助けになっている。
(略)
ただ、そのような意図的に整備しているわけではないインフォーマルなものごとの重要性を言葉にするのは難しい。

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 インフォーマルとは、公式でないさま、形式ばらないさま、略式を指します。

 ……コロナ前からも、不審者情報などに伴い、学校帰りにふらふら寄り道するような生活の「余白」は、少しずつ消えつつあったように思います。
そこにきてコロナ禍による在宅でのオンライン授業は、さらに「余白」を無くす方向へ加速させてしまいました。
孤独を抱えている子どもにとっては、袋小路のような状況でしょうか。

*****


國分
Loneliness、寂しさを感じるのは人間にとって本当につらいことで、社会のスティグマによって人間をそのような状況へ追い込むことがあってはなりません。
それと同時に、人間が何ごとかをなすためには孤独というものも大切です。つまり、私が自分自身と一緒にいられるということですね。
そういう意味で一人ひとりが、うまく孤独な時間を過ごすことができる社会環境と、心のあり方を手にすることができればいいですね。


*****

 
 ブックレットの中に、大空幸星(おおぞらこうき)氏というNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の方の文章がありました。
チャットボットを使った相談窓口を運営している方のようです。
存じ上げなかったのでネットで検索すると、若くてタレントのような風貌でびっくりしてしまいました。このキラキラしたお名前は本名だそうです。


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大空
私たちの窓口は、相談者が連絡をしてすぐに相談員とつながるわけではありません。まず、チャットボットと会話してもらい、内容から独自のアルゴリズムを用いて自動的にリスクアセスメントを行うのです。
今では、そうして振り分けられたリスクが低いと考えられるグループの中にさえ、「自ら命を絶ちたい」といった言葉が発せられるようになっています。


*****

 「スクールカウンセラーには恥ずかしくて話せない」という子や、スクールカウンセラーとの相性に配慮しなければならない子はたくさんいるようです。
それにしても若年層を取り巻く問題は、深刻さを増しているものだと実感しました。「自殺」が日常に侵食してきている。


*****

大空
そこで不可欠なのが、悩みに寄り添える「ゆるいつながり」をつくることでしょう。
対面を原則とする個別支援よりも、社会の中で気軽に頼れる存在をつくること。例えば私たちの「あなたのいばしょ」のような、名前を伏せて24時間いつでも相談できる窓口もその一つです。
しかし、先述したように、慢性的な孤独を感じ、自ら命を絶ちたいと思うほど追い詰められている人が、これほど多く社会に溢れている現状で私たちができることは対処療法のみです

*****


 コロナ禍がもたらした、変容していく関係性。つくづく、今は過渡期、転換期だと感じます。
現状が今後どのように変化するのか、どんな影響を及ぼすのか、注視していきたい。

 そして、教育、保健、福祉現場に携わっておられる方には、本当に頭が下がる思いです。
2020年からずっと、試行錯誤を繰り返す日々が続いていることと思慮します。目まぐるしく変わる状況に、難しい子ども、難しい保護者のバリエーション。

 最後に、2020年からの3年間が、子どもたちの未来に長い影を落とすことがないようにと願うばかりです。



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