第38話 『公正世界仮説』という認知バイアスを見つけたよ

文字数 1,221文字

 チャットノベルへいただいた、桐乃さんからのレターを抜粋します。

 性犯罪の被害者に対して「本人に隙があったのでは」とか「服装に問題があるのでは」などという、まるで被害者に落ち度があるかのような意見を見かけることが少なくないのですが(略)

 私もそれに関しては激しく同意で、由々(ゆゆ)しきことだと思っていました。
なぜ、矛先(ほこさき)を被害者に向けて攻撃するのでしょうか?

 その心理メカニズムを見つけました。
『公正世界仮説』という認知バイアスの一種だそうです。簡単に説明すると、

① この世界は公正。
ゆえに、人の行ないに対して、それにふさわしい結果が返ってくるという考え方。良い人には良いことが起こり、悪い人には悪いことが起こると考える。

② これは心理学者メルビン・ラーナーの研究。
(犠牲者を非難する第三者を、何度も目撃したことが発端となった)

③ つまり「因果応報」。
私たちは幼い頃から「昔話」「民話」により学んできた。「努力は必ず報われる」もそうですね。「自己責任だから」という考え方へも繋がるように感じます。

④ メリットは、「因果応報」が頭にあることが抑止力となり、社会の治安が守られること。

⑤ デメリットは、なにかのきっかけで被害者となった人に対し、「なにか悪いことをしたせいで罰が当たったのではないか」「そんな目に遭うのは、なにか落ち度があったのではないか」という思考の癖に陥ってしまうこと。

⑥ 被害者側も「自分に落ち度があるからこんな目に遭うのだ」と、自分に起きた不幸を納得しようとする傾向に陥りがちに。


 被害者支援センターの臨床心理学者が聞き取りしたケースによると、
「お墓参りしなかったから罰が当たった」
などと、事件とまったく無関係な事柄を結びつけて語る性被害者も、少なくなかったそうです。

 世の中は「運」で左右されるというのは心理的恐怖で、それから目を反らすための方策が『公正世界仮説』でしょうか。
日本は海外に比べ、『公正世界観』が強いそうです

 しかし知っての通り、世の中は因果応報の起承転結ばかりで進むわけではありません。
真面目に品行方正に生きていても性犯罪に遭うことがある。その事実は『公正世界観』を信じる人を不安にさせてしまう。そして『公正世界観』を取り戻すために、被害者叩きをしてしまうのかもしれません。

 公正世界観が好きな人って生真面目な人なんだろうけど、(不安が高じると)底意地悪い人にも見えますね。

 この『公正世界仮説』は、その発想自体は悪いものではないのですが、行き過ぎると暴力、いじめ、病気、貧困などで展開され、対象者を追い詰めると感じました。

 最近ではコロナもそうですね。ルールを守り気をつけていた人も感染してしまう。
それでも「感染対策を怠ったのではないか」「遊び歩いたのではないか」などと陰口が叩かれそうです。

 「自己責任!」と叩く人は、自分に不運ガチャが回ってきたときも、「自己責任……」と思うのでしょうか?ちょっと疑問です。

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