第20話 昔話「うぐいすの里」の絵も飾りたい

文字数 1,262文字

 前回のスピンオフ。
大富豪になったら、自宅の和風のリビングルームに、昔話「うぐいすの里」の絵もストーリー仕立てで並べたい。絵巻物にしようかな。
その絵は貧乏藝大生(日本画科)の学生に制作してもらい、ご褒美に授業料を払ってあげたい。足長おばさんになりたい。

「うぐいすの里」は、「見るなの座敷」「鶯内裏」「鶯浄土」とも呼ばれる昔話。いろんなパターンがあります。「うぐいすの里」ってケアハウスや老人ホームとかにありそうですね。

基本形は、

【起】
ある男が山奥で迷ってしまう。

【承】
一軒のお屋敷があり、そこを尋ねると美しい娘(鶯の化身)が出てきて、酒やご馳走をもてなしてくれる。
ある日女が「ここには13の座敷がありますが、決して13番目の座敷は開けないように」
そう言い残して外出する。
男は1番目から12番目まで座敷を開けて堪能する。(座敷の中身は後述します)

【転】
男は好奇心にかられ、禁止されていた最後の13番目の座敷を開けてしまう。

【結】
そこには鶯が木にとまっていて、一鳴きするとどこかへ飛び立ってしまった。
気がつくとお屋敷は消え、男は森の中で呆然と立ち尽くしていた。


起承転結の配分大丈夫ですか?

 これには”四つ”の座敷や ”倉” ”箪笥” 設定もあります。
四つの場合、座敷の中は四季の風景です。
夏→秋→冬、そしてラストは春の景色。鶯が飛び立ち去って行くのは同じです。

 それでは私ご贔屓の、13パターンのお座敷の中身を発表します。

一月の間。お正月。
二月の間。初午のお祭り。
三月の間。雛祭り。
四月の間。お花見。
五月の間。端午の節句。
六月の間。田植え
七月の間。七夕。
八月の間。お盆。
九月の間。お月見。
十月の間。秋祭り。
十一月の間。稲刈り。
十二月の間。餅つき。
最後十三の間。木に鶯がとまっている。

 地域によって多少の違いがありますが、私はこれを採用します。
……きれいだと思いませんか? 日本の四季と行事。
 学生さんには、十二か月それぞれの風景とストーリー部分を描いてもらいます。完成は急ぎません。ゆっくりでいいです。たまに制作現場を見に行って、その場にいた学生さん達に差し入れをします。(妄想)

 最後に鶯が鳴いて飛び立ち、なんにも無くなっちゃった、というのが日本らしいなと。そこがなんとも好き。なにか白昼夢を見ていたかのようで。

 物語の最初に戻っただけ。西洋のような化け物退治は出てこない。
そしてやはり「鶴」同様、見られた側が傷ついて哀しそうに去って行く。
見ちゃ駄目と娘は言うけど、なんの策も講じていない。まるで破られるためにあるような禁忌。
そして男は我慢できずに約束を破り、娘の本体を見てしまう。
娘は消え去る。男には切なく美しい記憶が残るだけ。

 この男の人、デリカシーの無さで恋人の内面にズカズカ入り、恋人を傷つけ逃げられちゃった人みたい。どうして恋人が去ったのかわからないタイプ。

 娘は傷ついて去り、男は失ってぼんやりする。
でもこの記憶は、人生の深度を変えると思う。
この記憶を抱えていれば、二人はまた出会うかもしれない。市井(しせい)のどこかで。


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