第4話 「ちいかわ」の世界が怖い

文字数 1,297文字

 「ちいかわ」というTwitterのマンガをご存じでしょうか。
フォロワー53万人、最近ファミマでもキャンペーンをしていました。

 とにかくキャラクターが可愛いです。
主人公のちいかわと、友達のハチワレが主軸(しゅじく)のゆるふわ不思議ワールド。
リプライ欄は「ちいかわちゃん、ハチワレ可愛い」のオンパレードです。

 あのー……可愛いんだけど、世界観が独特なんですよね、不穏(ふおん)なんです。
そこはとない悪夢テイストを、私は感じます。作者の意図(いと)の底が見えない。
それを込みで好きですね。


 ちいかわは純粋でいつもニコニコしているけど、意思表示がうまくできずあまり喋れない。すぐじんわり泣く。
突き抜けた明るさのハチワレが、ちいかわの気持ちを全部代弁(だいべん)してサポートしてくれる。どんなときも笑っちゃう。
それからノリの違うウサギがいる。ウサギは悩んだりしない。バイオレンス。
ちいかわとハチワレはいつもお互いを思いやっている。

「草むしり検定5級」に、ずっと勉強していたちいかわが落ちて、ハチワレが合格するシーン。
(よろい)さんという、ちいかわ達を管理する側がいるけど、ちいかわ達と仲良くなりすぎて鎧仲間からたしなめられるシーン。
ちいかわ達はお金を稼ぐため、レモンにシールを貼る内職をしたり、草むしりをしたり。
もっとお金を稼ぎたいときは、お(そろ)いの

を持って討伐(とうばつ)(キメラのような化け物退治)に出かける。そして消耗して帰ってくるシーン。

(私はさっきからなにを書いているんだ)

 私が言いたいのはここから。
ちいかわのことをTwitterで指摘した人がいるのだ。

 その人のツイートを要約すると、
〈予備校でバイトをしてた時、受付の社員やチューターにも愛想良くて自習室最後まで残っているのに学力が上がらない子と言動が同じでツラくなる〉
〈ルノアールで情報商材の勧誘受けちゃっている若い子全員ちいかわの表情〉

 つまり、ちいかわは搾取(さくしゅ)される側であることをズバリ指摘したのだ。
そしてそのツイートを読んだ人々が……。

〈ちいかわは発達障害かも〉
〈ちいかわに感じた漠然(ばくぜん)とした不安はこれだったのか〉
〈思えば私もちいかわです、どうしたらいいですか〉←この思考パターンがちいかわだとまた突っ込まれ

 最近では、ちいかわ達が「むちゃうま試食キャンペーン」に楽しそうに出かける回があったのですが、またその人が一言、

〈完全にマルチなんだよなぁ〉

 作品と、作品を取り巻くこういったムーブメントが私は大好きです。考察が好き。


 劇場版「シン・エヴァンゲリオン」公開時も面白かった。
エヴァンゲリオンは、息子が信仰対象のように視聴していたのを横目でしかみていないので、雰囲気しかわかりません。
でもタイムラインに流れてきた有識者の考察というか追悼(ついとう)というか、あれは狂っていてよかった。(褒め言葉です)

 私がたまたま目についた中で印象的だったのは、精神科医の斎藤(たまき)先生と熊代亨(くましろとおる)先生でした。noteとかブログとか。
自分の意識の混沌を、明確に言葉にできるのって凄い。

まるで国作り神話。(あめ)浮橋(うきはし)に降り立ち、(あめ)沼矛(ぬぼこ)を突き刺し()き回しすくい上げ、矛の先から(したた)り落ちる「なにか」を形にする、達人の作業だなぁ、と。


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