第40話 河村市長のような(隣の)課長再び~社内ゴシップ~

文字数 1,247文字

 異動の季節。
新体制がスタートしたばかりの残業時間に、河村課長(仮名)はいそいそ揉み手でやって来た。課内に話相手がいなかったらしい。

「佐久田さん、知ってた?***さんが、○○支店の※※さんと不倫していること」

 ***さんは今回転出した女性管理職。
河村課長は居ない人の悪口を語らせたら天下一品。

 ***さんを思い浮かべて「まあ、ありそうだな」と思ったけど、一応驚いてみせた。
「え?初めて聞きました」
「えええ~知らなかったの~!?」
 河村課長はニッコニコで、これは有名な話であること、多数の目撃情報があること、ダブル不倫であること、密会時のアクシデントの数々、そして今回の異動でお互いの勤務地が近くなったためやりたい放題であることなどをノンストップで語り出した。

 私は噂に(うと)い。女子更衣室に寄らないからだ。
女子更衣室へ寄るというその一手間が面倒くさくてスキップし、業務室へダイレクトに出入りしている。
一応問われたら「コロナだから密になりたくない」という答えを用意している。聞かれたことないけど。

「佐久田さんのロッカーの前に□□さんからのお餞別(せんべつ)が置いてありますよ」
の情報によりたまに女子更衣室へ足を踏み入れるが、滅多に来ない人(私)の登場にみんな微かに驚いているようで、いたたまれない。

 あ、3月にパートさんが増えて女子更衣室ロッカーが足りなくなったので、急場しのぎで私のロッカーを明け渡したんだった。
 私、ロッカー無くても平気なんですよ。お弁当と財布とスマホぐらいしか持ち歩かないから。
朝は少々寒くても帰りはいつもカッカして熱くなって帰ってくるので、コートもいらない。年々温暖化で温かくなっているから、マフラーと手袋があれば(しの)げるんだな、これが。

 おっと、ロッカー談議が長くなってしまった。
(くだん)の***さん、私より年上だよ、すごいな。
私は河村課長のベしゃりの合間に、
「生涯現役なんですね~」
乾いた笑いを差し込んだ。

 不倫を実行し継続するのってどんな感覚なんだろう。
主人公感に酔いしれているのかな。
後ろめたさも次第に麻痺するんだろうな。
まあ、私は***さんの不倫に関してはどうでもいいです。自分に関わることとなったら話は一転してハードモードになりますが。

 河村課長の毛穴から、「チャラチャラ不倫なんかしているヤツは、いつか痛い目に遭うはずだ」といった総意が漏れてくる。
河村課長的な人はあまねく存在する、噂は面白おかしく伝播(でんぱ)し、***さんの輝かしい実績を曇らすだろう。
 私としても***さんには大変お世話になったけど、この噂話を聞いて正直がっかりした。裏で不倫していたのかと思うと。←ほら、こんな風に!!

 私が勝手に真面目に生活しているだけだから、私生活が不真面目だからといって***さんを批判するつもりはないです。

 でも、不倫は必ず漏れるものだし、不倫を継続するということは信用を引き換えにするという、自分でもびっくりするくらい当たり前のことを言って締めますね
あーびっくりした。


会社の廃棄花リメイク。


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