第54話 朝ドラ『舞い上がれ』心に残ったシーン

文字数 2,298文字

 朝ドラは生活のルーティンに組み込まれており、毎回楽しんで視聴しています。

 前作の『ちむどんどん』は、料理がとにかく美味しそうでした。
『ちむどんどん』を思い返すと、ヒロインがギャーギャー騒いだ時、姉の旦那が「うるさいっ!」と一喝したシーンが一番すっきりした、という。
そしてマルチに延々と引っかかり続ける兄が、発達障害めいていてきつかったです。

 現在なら、バイトで詐欺の受け子をやったり、預金口座を売って、一生口座開設ができなくなったりするんだろうな。

 『カムカムエブリバディ』の兄もそうだったけど、物語に新しい風を入れるための道化役が、発達障害とオーバーラップするようになると、見ていて辛くなります。

*****


 そして今回、最終回を迎えた『舞い上がれ』、私の好物が懐石料理のように少しずつ盛り込まれていて、よかった、好きでした。

 ヒロインは舞ちゃん。
 過保護な母と一時期距離を置き、長崎・五島列島で祖母と暮らすことで「たくましさ」を育んだ幼少期。

 大学のサークルで人力飛行機制作に没頭した青春。航空学校での友情と初恋。

 リーマンショックによる向かい風の中、社長である父の急死、事業承継、再建、リストラ、ベンチャー、独居老人問題、再び事業承継、コロナ……

 そしてイノベーションと待ち合わせをする近未来
空飛ぶクルマ(電動垂直離着陸機)(eVTOL)のパイロットになります。

 私は途中で「これはもしや……」と(うな)りました。
「ひょっとして、登場人物の誰一人こぼさずに未来へ運ぶつもりか?」


 例えば……
 舞ちゃんと母親(新代表者)は、リストラする社員に新しい職場を見つけてあげる。そして会社が軌道に乗ったら、リストラした社員に声をかけ呼び戻す。

 低迷する東大阪の町工場を盛り上げようと、舞ちゃんはオープンファクトリーを開催する。
町が活気づく中、業績悪化により荒んでみんなの温度を下げる親方を、切り捨てず親身に相談に乗る。出会いは連鎖し、ビジネスチャンスを連れてくる。

 大学生になった朝陽くん(ギフテッド風味で元不登校児)を、空飛ぶクルマ開発の一員に招く。

 舞ちゃんが操縦する空飛ぶクルマ「かささぎ」に、車椅子の祖母と医師を乗せ、病院に向かう島から島への有人フライトに成功する。(最終回ハイライト)
 などなど。

 舞ちゃんは、自分のことより人が喜ぶことが好きで、チームワークを常に考えている。

 チームワークといえば余談ですが……子どもが高校生の頃、大学のHPを見まくりましたが、とにかく「チームワークのとれる人材」が求められているという事がひしひしと伝わってきました。人手不足の未来を、チームワークで何とかしようってコト? 切実。


 一見ゆるふわ癒し系の舞ちゃんだけど、へこたれないメンタルの持ち主。
少しも取りこぼさない、全員(すく)う(救う)。
トロッコ問題が起きたらどうするんだろう……
リアルで身近にいたら、きっと“いい意味”で「変人」かもしれない。

*****


 見どころはたくさんあるのですが、実は私が一番感動したのは、社長(舞ちゃんの母)が、株式会社イワクラの後継者を指名したシーンなのです。

 会社の業績が安定したところで、五島列島に住む母(舞ちゃんの祖母)の介護問題が浮上。
自分がリタイアしたあと、社長を任せられる後継者が子どもの中にいない。
東大卒の長男はトレーダーで、イワクラに興味無し。
舞ちゃんはイワクラの子会社「株式会社こんねくと」を設立したばかり、ベンチャーやスタートアップで頭がいっぱい。

 そこで社長は、亡夫とずっと一緒にやってきた職人の結城君((あきら)兄ちゃん)を後継者に打診。今や安定企業のイワクラを、親族以外の従業員に継がせるのです。

 後継者不足で廃業に追い込まれる中小事業が多い中、従業員や第三者への事業承継は日本の重要な経営課題。
それも盛り込まれていて感動してしまいました。

 坊主頭の結城君は、舞ちゃんにとっても、優しく頼れるお兄ちゃんです。
真面目で明るく素直、ひたむきな仕事振りに先々代社長(舞ちゃんの父)と笠巻さん(ベテラン職人)たちに可愛がられ、キャリアを積んだ結城君。
地道な日々は無駄じゃなかった、結城君、報われたね……

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 そして次に心に残ったのが、舞ちゃんの恋のライバル、秋月さんのシーン。
舞ちゃんと幼馴染の貴司君は、誰が見たって両想いなのに、今の友人関係が壊れることが怖くて、お互いに思いを伝えられない。よくあるやつ。
ドラマ未視聴の方へ補足情報ですが、貴司君は短歌の本を出版している歌人です。

 秋月さんは自らも短歌を詠み、貴司君の作品を愛してやまない女性。
貴司君にちゃんと告白してちゃんと玉砕します。

 玉砕後、秋月さんは貴司君が舞ちゃんに贈った短歌を見てしまいます。

君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた

 それが、万葉集の情熱的な恋の歌、
君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも

 本歌取り(オマージュ)だと気がつくのです。

 貴司君が短歌に忍ばせた舞ちゃんへの恋心を、舞ちゃんよりも先に秋月さんが気がついてしまう! 貴司君作品の最大の理解者であったが故に!! なんてこと。

 秋月さんは、そのことを舞ちゃんに教えてあげるのか? 恋のライバル、舞ちゃんに……

 結果、秋月さんは舞ちゃんの背中を押して、自分は潔く去るのです。あっぱれ。
秋月さん、今までウザい女と思ってごめんね。そして貴司君、ちょっと解りにくいって。


 おっと、2000字越えてしまいました。この辺にしておきます。
相変わらずズレていて、本筋ではない話ばかりですみません。


散歩中、川沿いのしだれ桜


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