その②
文字数 1,977文字
そして指定された時刻に、綹羅は屋上に上がった。
「よく来たな…?」
冷たい視線を一方的に送りつけてくる泰三。綹羅は何をされるのかと、内心ではビクビクしていたが、
「いつ、誘う気なんだ?」
「はい? 何だそりゃ?」
「隠しても無駄だぞ。俺にはわかるからな……お前、環のことが好きなんだろう?」
図星。流石の綹羅も驚きを隠せない。
「な、なん…。ちょっと待てよ? どうしてそうなる?」
「とぼけるなオオボケ、見てればわかる」
泰三はそれしか言わない。この時綹羅は、てっきり諦めろと言われると想った。しかし予想外のセリフが、泰三の口から飛んで来るのだった。
「環は八月一日には、十六歳の誕生日を迎えてしまう。その前なら大丈夫だ」
「何のことだ?」
「知っているだろう、お前も? シャイニングアイランドのフレアパス。もうすぐ環はあれをもらえなくなってしまうんだ。その前に、一緒に行っておいた方がいい」
どういう風の吹き回しなのか、泰三の態度は綹羅に協力姿勢。
「へえ、いいのかよ? 俺が最上さんと一緒にデートしても?」
「構わない。俺は環のことはただの幼馴染としか思っていないからな…。そして都合のいい解釈をするなよ? 俺はお前に協力してやろうとは思っていない。ただ、いつまで経っても一歩を踏み出さないお前を見ているとイライラするだけだ」
若干口調が速くなりながらも、泰三はそう言った。
「そうか! なら良かったぜ!」
「良かった……とは?」
「だって、幼馴染って一番強力な相手じゃないか。でもお前は俺に協力してくれるんだろう?」
「だから、そうではない!」
必死になって否定する泰三。だが顔は若干赤くなっている。
「とにかく! シャイニングアイランドならデートスポットには困らないだろう。環は夏休みは暇なはずだからな、後はお前が努力して誘え。断られることもないはずだ」
と言い残して彼はさっさと屋上から去ってしまった。
「う~ん、どうしようかな……?」
綹羅はここで考え込む。環と一緒に遊園地に行くというのは、願ってもないチャンス。だが、誘う勇気があるかどうか。
「ここは……。男なら行くしかない!」
楽観的故にすぐに決めた。そして教室に戻ると、環は泰三と話をしている。
「お、綹羅じゃないか」
泰三が彼の存在に気がつくと、声を出して彼を呼び寄せた。
「二人はさあ、夏休みの予定とか埋まってるのか?」
ここは不自然にならないように話題をふる。そして、
「暇なら遊園地…シャイニングアイランドに行こうぜ!」
ちょっとストレートだが、綹羅は言った。
「私は暇だから行けるよ、綹羅君!」
環が答えたのを待って泰三は、
「俺は塾の夏期講習で無理だな。他のみんなもそうじゃないのか」
自分は参加できないことと、他の人を誘っても断られるかもしれないことを暗に言う。そうすればここは、
「じゃあ綹羅君、私と行こっか!」
となるのだ。
「お、いいぜ!」
一々興奮したりしない。だが心の中ではガッツポーズをした。
「綹羅、シャイニングアイランドに行くんだ?」
近くでその話を聞いていた砂剣 絢嘉 が綹羅に聞いた。
「ああ、最上さんと一緒にな!」
「羨ましいですね。私も誘えれば誘いたい人はいるのですが、二人きりでっていうのは中々…。この前も団体で行くのが精一杯でしたよ」
果叶も会話に加わる。その話によれば果叶と虹彩 百深 、白翼 遥 、紫毒 直希 という仲の良いメンバーで行ったらしい。
「ええ! 果叶、あそこに行ったの? 絢嘉はちょっとやだなあ。だって並ぶでしょう、行ったことないけど?」
「全然ですよ? アトラクションは多いし、退屈しない良いところですよ」
「でもさー」
そのまま二人の会話はヒートアップしていた。綹羅は横で聞いていたが、聞いたそばから耳から洩れている。
(夏休みは、最上さんと一緒に…!)
そのことでいっぱいなのだ。
「ちょっと、聞いてた?」
絢嘉に言われ、ハッとなる。
「ああ、もちろん! 俺は楽しんでくるからな!」
やがて、期末試験も終わって夏休みが始まる。休みの最初の方で綹羅は、環とデートに行く予定である。
「デカい遊園地だな…。本当に何でもそろってる」
ウェブサイトを閲覧していると、その規模の大きさに驚いた。とても一日では回れない広さだ。
「問題は、最上さんがホテルコロナに泊まっていくかどうかだよなー。一泊しないと絶対に端まで回れないよな、ここ…」
下品な下心はない。あるのは純粋に、意中の人と楽しみたいという心だけだ。
「よく来たな…?」
冷たい視線を一方的に送りつけてくる泰三。綹羅は何をされるのかと、内心ではビクビクしていたが、
「いつ、誘う気なんだ?」
「はい? 何だそりゃ?」
「隠しても無駄だぞ。俺にはわかるからな……お前、環のことが好きなんだろう?」
図星。流石の綹羅も驚きを隠せない。
「な、なん…。ちょっと待てよ? どうしてそうなる?」
「とぼけるなオオボケ、見てればわかる」
泰三はそれしか言わない。この時綹羅は、てっきり諦めろと言われると想った。しかし予想外のセリフが、泰三の口から飛んで来るのだった。
「環は八月一日には、十六歳の誕生日を迎えてしまう。その前なら大丈夫だ」
「何のことだ?」
「知っているだろう、お前も? シャイニングアイランドのフレアパス。もうすぐ環はあれをもらえなくなってしまうんだ。その前に、一緒に行っておいた方がいい」
どういう風の吹き回しなのか、泰三の態度は綹羅に協力姿勢。
「へえ、いいのかよ? 俺が最上さんと一緒にデートしても?」
「構わない。俺は環のことはただの幼馴染としか思っていないからな…。そして都合のいい解釈をするなよ? 俺はお前に協力してやろうとは思っていない。ただ、いつまで経っても一歩を踏み出さないお前を見ているとイライラするだけだ」
若干口調が速くなりながらも、泰三はそう言った。
「そうか! なら良かったぜ!」
「良かった……とは?」
「だって、幼馴染って一番強力な相手じゃないか。でもお前は俺に協力してくれるんだろう?」
「だから、そうではない!」
必死になって否定する泰三。だが顔は若干赤くなっている。
「とにかく! シャイニングアイランドならデートスポットには困らないだろう。環は夏休みは暇なはずだからな、後はお前が努力して誘え。断られることもないはずだ」
と言い残して彼はさっさと屋上から去ってしまった。
「う~ん、どうしようかな……?」
綹羅はここで考え込む。環と一緒に遊園地に行くというのは、願ってもないチャンス。だが、誘う勇気があるかどうか。
「ここは……。男なら行くしかない!」
楽観的故にすぐに決めた。そして教室に戻ると、環は泰三と話をしている。
「お、綹羅じゃないか」
泰三が彼の存在に気がつくと、声を出して彼を呼び寄せた。
「二人はさあ、夏休みの予定とか埋まってるのか?」
ここは不自然にならないように話題をふる。そして、
「暇なら遊園地…シャイニングアイランドに行こうぜ!」
ちょっとストレートだが、綹羅は言った。
「私は暇だから行けるよ、綹羅君!」
環が答えたのを待って泰三は、
「俺は塾の夏期講習で無理だな。他のみんなもそうじゃないのか」
自分は参加できないことと、他の人を誘っても断られるかもしれないことを暗に言う。そうすればここは、
「じゃあ綹羅君、私と行こっか!」
となるのだ。
「お、いいぜ!」
一々興奮したりしない。だが心の中ではガッツポーズをした。
「綹羅、シャイニングアイランドに行くんだ?」
近くでその話を聞いていた
「ああ、最上さんと一緒にな!」
「羨ましいですね。私も誘えれば誘いたい人はいるのですが、二人きりでっていうのは中々…。この前も団体で行くのが精一杯でしたよ」
果叶も会話に加わる。その話によれば果叶と
「ええ! 果叶、あそこに行ったの? 絢嘉はちょっとやだなあ。だって並ぶでしょう、行ったことないけど?」
「全然ですよ? アトラクションは多いし、退屈しない良いところですよ」
「でもさー」
そのまま二人の会話はヒートアップしていた。綹羅は横で聞いていたが、聞いたそばから耳から洩れている。
(夏休みは、最上さんと一緒に…!)
そのことでいっぱいなのだ。
「ちょっと、聞いてた?」
絢嘉に言われ、ハッとなる。
「ああ、もちろん! 俺は楽しんでくるからな!」
やがて、期末試験も終わって夏休みが始まる。休みの最初の方で綹羅は、環とデートに行く予定である。
「デカい遊園地だな…。本当に何でもそろってる」
ウェブサイトを閲覧していると、その規模の大きさに驚いた。とても一日では回れない広さだ。
「問題は、最上さんがホテルコロナに泊まっていくかどうかだよなー。一泊しないと絶対に端まで回れないよな、ここ…」
下品な下心はない。あるのは純粋に、意中の人と楽しみたいという心だけだ。