その④
文字数 1,838文字
勝負は決まった。もう今田には戦意は残っていない。
「私が負け、シャイニングアイランドも終わるとはな……」
仰向けに倒れ天高く登っている太陽を見ながら今田は言った。次に綹羅の方を見た。
「トドメを刺さないのか?」
言われた綹羅は大地を踏みしめて今田に近づき、
「やってどうなる? それをしたら、お前の言葉を肯定しちまうだろ? 俺は言ったはずだ。神通力は人を傷つける力じゃないんだ」
と、返事をした。
綹羅はそれをこれから証明するつもりである。どれぐらいの時間がかかるかは不明だが、自分がやるべきだと思うのだ。
「馬鹿だな、お前は……。そんなことができると本気で思っているのか? 無理に決まっている」
今田が反対方向を見た。そこにはハウメアの姿が。彼らは戦いに来たのではない。今田をこの場所から脱出させるために来たのである。他の『惑星機巧軍』のメンバーは既にマケマケたちが救出済みだ。
「お前の仲間が残っていたか…。じゃあ逃げるといいぜ。俺はお前の思惑通りには動かない! 神通力、その真の意味……それを必ず見つけてみせる!」
ハウメアは今田に肩を貸し、そして綹羅の方を見向きもせずにボロボロになった園内から逃げるように立ち去った。
「……誰だ? 休日出勤でもしてた従業員か?」
この時泰三たちとすれ違ったのだが、互いに無視をした。今田たちには今戦いを挑む意味はないし、泰三たちは彼らが敵であることを知らない。
綹羅と環は、ここでやっと泰三たちと合流できた。そして何があったのかを聞いた。
「………そんなことが。それで園内は派手になったってわけか、この通り」
昨日までは人々の夢や希望が集まる場所。神通力に適性を持つ者をおびき寄せるための場所。だが今は、戦場になって完全に瓦礫の山。
「でも、綹羅の勝ちね! シャイニングアイランドは終わりだわ!」
陵湖は声を大きくして、そう叫んだ。
「手を貸すわ。綹羅、あなた結構ボロボロよ?」
美織が手を差し伸べたが、それを綹羅は断る。あくまでも自分で大地を歩むことに拘った。
「さあ、帰ろうぜ。いつまでもこんなところにいる理由はない」
勇宇が急かすと、
「行く行く!」
絢嘉は元気を見せて頷いた。
「ちょっと待ってくれ」
しかし綹羅はまだ帰る気はない様子。
「どうしたんだ?」
大地に手を置いて、そして神通力を使う。するとこのボロボロになった園内全体に、植物が生え広がる。そしてそれらは綺麗な花を咲かせた。
「優しいね、綹羅は」
その行為を見ていて環が言った。
「普通だったらこんな場所、さっさと立ち去りたいよ。でも綹羅はそうじゃなくて、花を添えるだなんて…。私だったらできないかも…」
「言っただろ? 俺は神通力は、人を傷つける力じゃないって信じてるんだ。だからこうして、緑を生み出す。この園内で傷ついた人たちの傷を癒せるかもしれない。それが神通力の正しい使い方になるかも、だ」
綹羅の心には今、様々な感情が渦巻いている。色々な人物と出会い、体を張って神通力を使って彼らと戦ったこのシャイニングアイランド。その戦いの記録は全て、彼の心の中に仕舞ってある。決していい思い出ばかりとはいかないのだが、忌々しい場所にもしたくないのだ。
「さて、帰るか」
さらに一歩、緑色になった大地に踏み出した。
「あ、そう言えば…俺、泰三と勇宇に謝んねえと!」
それを今、綹羅は思い出した。だが二人は、
「頭を下げることはない。悪者はその今田ってヤツであって、綹羅じゃないんだからな」
と、不問にする態度をとった。それでもなお綹羅は謝罪をしようとしたのだが、その気持ちは受け取れないと泰三は言った。
「やましいことなんてここで捨てちまえよ。その方が随分と楽になれるぞ。少なくとも俺と勇宇は、お前にされたことはもうどうでもいいと思ってる。人間誰しも間違えるんだ、気にするな! それにそんなことよりもお前にはやるべきことがあるだろう?」
そうだ、と綹羅は頷いた。
「いつか、きっと今田と会う時が来るかもしれない。アイツじゃなくて『歌の守護者』や『惑星機巧軍』かもしれないけど…。まあ、その時のために答えを準備しておかないとな」
大地の上を歩み、彼らは帰路に就く。園内を出る頃には、太陽は役目を終えたと言わんばかりに地平線の向こうに隠れた。
「私が負け、シャイニングアイランドも終わるとはな……」
仰向けに倒れ天高く登っている太陽を見ながら今田は言った。次に綹羅の方を見た。
「トドメを刺さないのか?」
言われた綹羅は大地を踏みしめて今田に近づき、
「やってどうなる? それをしたら、お前の言葉を肯定しちまうだろ? 俺は言ったはずだ。神通力は人を傷つける力じゃないんだ」
と、返事をした。
綹羅はそれをこれから証明するつもりである。どれぐらいの時間がかかるかは不明だが、自分がやるべきだと思うのだ。
「馬鹿だな、お前は……。そんなことができると本気で思っているのか? 無理に決まっている」
今田が反対方向を見た。そこにはハウメアの姿が。彼らは戦いに来たのではない。今田をこの場所から脱出させるために来たのである。他の『惑星機巧軍』のメンバーは既にマケマケたちが救出済みだ。
「お前の仲間が残っていたか…。じゃあ逃げるといいぜ。俺はお前の思惑通りには動かない! 神通力、その真の意味……それを必ず見つけてみせる!」
ハウメアは今田に肩を貸し、そして綹羅の方を見向きもせずにボロボロになった園内から逃げるように立ち去った。
「……誰だ? 休日出勤でもしてた従業員か?」
この時泰三たちとすれ違ったのだが、互いに無視をした。今田たちには今戦いを挑む意味はないし、泰三たちは彼らが敵であることを知らない。
綹羅と環は、ここでやっと泰三たちと合流できた。そして何があったのかを聞いた。
「………そんなことが。それで園内は派手になったってわけか、この通り」
昨日までは人々の夢や希望が集まる場所。神通力に適性を持つ者をおびき寄せるための場所。だが今は、戦場になって完全に瓦礫の山。
「でも、綹羅の勝ちね! シャイニングアイランドは終わりだわ!」
陵湖は声を大きくして、そう叫んだ。
「手を貸すわ。綹羅、あなた結構ボロボロよ?」
美織が手を差し伸べたが、それを綹羅は断る。あくまでも自分で大地を歩むことに拘った。
「さあ、帰ろうぜ。いつまでもこんなところにいる理由はない」
勇宇が急かすと、
「行く行く!」
絢嘉は元気を見せて頷いた。
「ちょっと待ってくれ」
しかし綹羅はまだ帰る気はない様子。
「どうしたんだ?」
大地に手を置いて、そして神通力を使う。するとこのボロボロになった園内全体に、植物が生え広がる。そしてそれらは綺麗な花を咲かせた。
「優しいね、綹羅は」
その行為を見ていて環が言った。
「普通だったらこんな場所、さっさと立ち去りたいよ。でも綹羅はそうじゃなくて、花を添えるだなんて…。私だったらできないかも…」
「言っただろ? 俺は神通力は、人を傷つける力じゃないって信じてるんだ。だからこうして、緑を生み出す。この園内で傷ついた人たちの傷を癒せるかもしれない。それが神通力の正しい使い方になるかも、だ」
綹羅の心には今、様々な感情が渦巻いている。色々な人物と出会い、体を張って神通力を使って彼らと戦ったこのシャイニングアイランド。その戦いの記録は全て、彼の心の中に仕舞ってある。決していい思い出ばかりとはいかないのだが、忌々しい場所にもしたくないのだ。
「さて、帰るか」
さらに一歩、緑色になった大地に踏み出した。
「あ、そう言えば…俺、泰三と勇宇に謝んねえと!」
それを今、綹羅は思い出した。だが二人は、
「頭を下げることはない。悪者はその今田ってヤツであって、綹羅じゃないんだからな」
と、不問にする態度をとった。それでもなお綹羅は謝罪をしようとしたのだが、その気持ちは受け取れないと泰三は言った。
「やましいことなんてここで捨てちまえよ。その方が随分と楽になれるぞ。少なくとも俺と勇宇は、お前にされたことはもうどうでもいいと思ってる。人間誰しも間違えるんだ、気にするな! それにそんなことよりもお前にはやるべきことがあるだろう?」
そうだ、と綹羅は頷いた。
「いつか、きっと今田と会う時が来るかもしれない。アイツじゃなくて『歌の守護者』や『惑星機巧軍』かもしれないけど…。まあ、その時のために答えを準備しておかないとな」
大地の上を歩み、彼らは帰路に就く。園内を出る頃には、太陽は役目を終えたと言わんばかりに地平線の向こうに隠れた。