第60話 函館の旅・DAY2-③

文字数 877文字

 ホテルのチェックインのために並び始めた私でしたが……

 夫はふらっと何処かに姿を消した。確かに2人並ぶ必要は無いが、何の断りもなく居なくなるなんてあんまりだ。こういう夫の身勝手さは何度もやられているが、未だに腹が立つし慣れない。イライラしながら待っているとホテルの人が

『荷物を預けて、先に観光に行かれるのはどうですか』と列に並んでいる人に声をかけていた。
『それ、いい‼︎』
何処かでぶらついていた夫に電話して、列から外れた。でも私以外の人は誰も列から離れようとしなかった。

 直ぐに浮かんだのは函館山からの夜景。ちょうどホテル近くに山頂行きのバス停があり、時刻表を用意してもらった。今から行けば明るいうちの景色も見られるという絶妙の時間。ホテルに到着して、1時間後には山頂にいた。

 そんなに高い山ではないが、函館の景色を一望するには充分な位置にあった。山頂は随分寒く、防寒用のダウンやフード付きのパーカーを着ていたのは正解だった。

 だんだん陽が沈み始め、どんどん観光客が集まってきた。修学旅行生も何校か来ていた。みるみるうちに展望台は過密に。代わる代わる前の方に出ては、?万ドルの夜景を撮っていた。10月下旬だったが、体感温度は0℃くらいではなかったか。私たちはたまらず、展望台に併設されているレストランに入った。夜景を一望できる窓際は満席だったので、空きを待つために後ろの席に座った。しばらくして窓際の席の人が立ち上がったのを見逃さず、私は声をかけた。

「お席、空きますか?」

「はい、どうぞ」

と返事をもらい、陣取ろうとした瞬間、不覚にも同世代であろうオバハンに滑り込まれた。『チッ!』心で舌打ち。そのオバハンは、少し年上らしきオバハンと2人で座った。さぞかし私の視線を感じただろう。もちろんだが無視して夜景を眺めながらお喋りしていた。まあ、いい。ここに来れただけで良しとせねば。これ以上望んではいけないと言いきかせている未練がましい自分がいた。

 少し経って、オバハンに取られた席よりも良く見える席が空いて、一生の思い出に残るであろう綺麗な夜景を堪能しました。




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