第52話 函館の旅・準備編

文字数 950文字

 今日からしばらく旅のお話です。

 8月下旬の昼下がり、お昼ご飯を食べながらYouTubeを見ていた。私がよく見るのは旅。お気に入りの旅系YouTuberも何人かいる。この日は函館。ホテルの朝食があまりにも美味しそうなのを見て、夫の何気ない言葉を思い出した。

「旅行はさー、朝食が旨いホテルに泊まれればいいと思ってるんだよね〜」

細かい事だが、こんなラフな言い方をした相手は私じゃない。誰だったかは覚えていないが。そしてふと、思った。

『ちょうどいいじゃん、このホテル。飛行機に乗れるし、行きたかったラッキーピエロ(ご当地ハンバーガー屋)もあるし。ウシシ……』と。

 だが、旨い朝食だけなら函館でなくてもあるはず。函館にする大義名分はないかなぁ。しばし考え……ニヤリ。

結婚記念日‼︎が近いわ。

 今年は30周年の真珠婚。いいね〜、コレ使える。早速、夫の機嫌が普通以上の時を見計らって函館行きを話した。

「結婚30年の節目だから、結婚記念日前後で旅行したいんだけど」

「何処?」

「函館。朝食の評価が高いホテルがあるんだよね」

「分かった」

 夫の「分かった」はOKということ。後日いろいろな旅行サイトにアクセスした。10月下旬のことなのに、私が行こうとしたホテルの空きは8月末辺りなのに満室間近だった。夫のニンジンであるホテルが取れなければ何にもならない。急いでポチる。ホテルの確保は出来たが、飛行機は大丈夫か?さらに検索、検索、検索……飛行機も席が埋まりつつあった。行きは千歳着、帰りは函館発のルート。飛行機のチケットは予約=決済なので最後のポチりは少し震えた。

『ああ、たとえ間違っていても、後戻り出来ない……』

 アラ還以上の人なら、このネット決済のドキドキ、お分かりだろうと思うが。首尾よく出来たと思った。ホテルも飛行機も。

ダダダダダッ……

夫が階段を駆け上がる音がした。

「ねぇ、飛行機取っちゃったの?先に言ってくれなきゃ‼︎勝手なことしちゃダメだよ!こっちだっていろいろ予定があるんだから」

 どうやら夫のスマホに航空券の案内が届いたようだ。私、日にちも言ったよね?と心の中で叫ぶ。でも、ここで声を荒げては旅行が吹き飛ぶ。耐えた。夫と冷戦が長かった私は、言葉足らずを思い知らされたのだった。

 この旅、出鼻を挫かれました。




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