第40話 再発

文字数 838文字

 先日、母の病院へ付き添いました。

 前回から1ヶ月半ほど空いていた。今回は血液検査と診察のみだったので、気楽に構えていた。ところが思わぬ結果が……

「ガンの数値が異常に高いんだけど、どうしちゃったのかなぁ。お昼ご飯食べちゃった?」

担当医が言った。診察は14時。本来なら、とっくに済ませている時間帯だが、母は神経質なので診察後に昼食を摂るのが常だ。

「まだ食べていません」

それを聞くや否や

「じゃあ、直ぐにCT撮ってもらおうかな」

 想定外の展開に気持ちが(ざわ)ついたが、母は意外にも落ち着いていた。その後の診察で肝細胞ガンが再発していることが分かった。担当医は淡々とCT画像の説明をする。そして最後に

「治療しますか?」

と訊いた。母の性格上、即答は無理だ。また前回の術後に相当な痛みで苦しんだので、猶予が欲しいと私が申し出た。医師は検討材料として、治療方法をいくつか挙げてくれた。その中には、前回受けたラジオ波は無かった。ガンの数が多くて無理だと。返事を2週間後に決め、病院を後にした。

 帰路の車中で母は

「やっぱり、あると思った。だってシワが急に増えたから」

 以前の投稿で『高齢なんだからシワは当たり前』と返した自分が恨めしかった。家に戻り父に説明をしている時にも

「ここ、1ヶ月ほど階段の昇り降りが辛かったし、髪の毛もすごく抜ける気がしたんだよね」

と体調の変化を話した。もっと若ければ直ぐにでも診察を受けたかもしれない。でも82歳の母だと加齢ととってしまえば済んでしまうかもしれない症状だ。高齢者は一見、病気と加齢の境い目が分かり辛いと思う。たまたま母は高齢になる前から定期的に受診しているので、治療できる段階で見つかっていると言うだけだ。

 医師の説明を話したあと、父がポツリと

「ワシはもう充分生きたと思っているから、手術は考えんけど、お爺さん(母の父親)ぐらいまでは生きたいら?86だっけ?」

 母は黙っていたが小さく頷いたように見えた。

 前回の術後の苦しみは、喉元を過ぎている気がします。


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