第50話 母の外泊

文字数 919文字

 最近は両親の介護ばかりの投稿で、意識高く、ポジティブにアラ還を生きている姿をお伝え出来ず残念に思いますが、高齢初心者世代の人たちが仲間意識を持って読み続けていただければと思っています。もちろん、介護以外の話題があれば、いつものように、ダラダラ投稿させていただきたいとも思っています(笑)

 明日、母が何度目かの肝臓癌切除の手術をする。今日は入院の日。私の小さなスーツケースを貸した。前回の入院の時、昔ながらの重いボストンバックの使い勝手が悪そうだったから。

「ああ、これなら楽に運べるね。最近はみんなこれで入院してるし……」

 母は30代で体調を崩した。最初は胃腸炎。母曰く。私と弟が小学生の頃、集団登校の時間に間に合わず、朝ごはんを食べて直ぐ、学校まで一緒に走って登校させたからだと。申し訳ないが、ほとんど記憶に無い。その時に服用した薬が原因で、足の裏の感覚に異変が起き、ストレスを抱え、父は会社を変え、母の実家近くに転居した。少しでも精神が安定するだろうという気持ちからだったようだ。だが、その後も子宮筋腫を患い、麻酔が効き過ぎて死にかけた。それからの母は常に体調不良がつきまとい、本人も健康体ではないと思い続けて今日に至る。

 父は仕事人間。少なくとも子どもだった頃の私は、そう思っていた。でも、それは少し違っていたようだ。以前の投稿で、母が物を投げる話をしたが、それは父の身勝手が招いたことと言っても過言ではない。父は一見優しく見える。でもそれは一方的な空回りで気遣いが無い。相手の立場が、まるで分かっていない。言っていること、やっていることは悪くないが、今じゃない、そこじゃないということが多い。

「だから、友人がいないんだよ、あの人は」

 いつだったか、母が吐き捨てるように言った。父の行動の尻拭いをやり続けた人生だと母は嘆く。私から見れば、そんな父に頼りっぱなしの母だと思うのだが。

 入院の為の外泊なのに、母が何故か嬉しそうに見えた。使ったことのないキャリー付きのスーツケースを持って行く先は病院。もう退院しても旅行で使うことはないだろうに。そう思うと哀しみが込み上げてきた。

 生きている限り、少しでも幸せを味わってほしいと思います。
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