第10話 美容室

文字数 884文字

 一大決心です。

 昨日、美容室に行った。20年以上通っていたところではなく、新しい店。1年迷った。今までの店へ何度か通う間にメリットとデメリットを反芻(はんすう)した。

《メリット》
○私の髪質を知っている

○カットが上手く、2ヶ月経ってもスタイリングしやすい

○私にあったスタイリングを分かっている

《デメリット》
✖️私の髪質が変わってからカットの質が落ちた(気がする)

✖️ここ数年、カットされた髪が背中に入ることが多くなった

✖️車で30分ほどかかる

✖️気心を知り過ぎて、こちらが気を使うような会話が時々ある

✖️私よりも年上なので、いつまでやってもらえるか分からない

 長年通い続けた1番の理由は、カットが上手いことだった。ところが数年前、美容師さんが口腔癌を患った。この後からカットの質が落ちたように思う。だが当時は美容室を変える気など無く、復帰されたことを喜んでいたのだが……

 1年前、歩いて10分ほどの場所に美容室が出来た。ポストに割引券の付いたチラシが入った。経歴はちょっと名の知れた美容室の出身で私よりも若く、キャリアが有る。一瞬で気持ちがグラグラした。自分が気付かないところで、新しい美容室を求めている自分を知った。その日から悶々と1年。

 前回のカットから2ヶ月半。いつものように美容室に予約を入れようと電話をかけたが通じない。そんなことが2度あった。

『変えなさいってことかな?』

このことが背中を押した。行きつけの美容室と決別する思いがあって、凄く緊張しながら新しい店の番号を押した。新しい店の予約は思い通りの日に取れた。

 そして昨日。自分が思うスタイリングを説明出来るか不安だったので、予め今までの形が分かる写真を選んで伝えた。私の拙い説明をちゃんと分かってくれた美容師さんは、想像をはるかに超えたスタイリングをしてくれた。心が踊った。

 会計時にいつ書いていたのか、もらったサービス券に手書きのコメントが書いてあった。

『長年通われた美容室から当店を選んでいただき勇気がいったと思いますが、ありがとうございます』

 こちらこそ、ありがとうございます。これから、宜しくお願いします。




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