第47話 突然登山

文字数 962文字

 充実した1日ではありましたが……

 連休最後の昨日は、上の子の引っ越しを手伝う予定になっていたが、キャンセル。転勤を伴う移動は何かと手順があるようで、後日になった。

 ポッカリ空いた、時間と車と我々夫婦。台風一過で気持ちのいい晴天。返事は分かっていたが敢えて訊いた。

「今日、ひま?」

「うん」

「じゃあ、

、どっかへドライブでもする?」

「分かった」

 夫はだいたい「いいよ」じゃなく「分かった」と言う。そして誘うのはもっぱら私の方からだ。良く言えば私優先。皮肉れば、私の方が積極的にコミュニケーションを取ろうとしている。離れて暮らす上の子が言った。

「2人で出掛けるなんて驚いてるよ。凄いね」

 子どもたちと暮らしていた頃に、今くらいの夫婦関係だったらと、残念に思うが後の祭り。それでも上の子は

『お父さんも仕事上で色々大変で、お母さんに当たるしか無かったんじゃない?お母さんも大変だったね』

そうLINEで返事がきたときは申し訳ない気持ちと理解ある言葉に涙が出た。

 結局、昨日もドライブ。ウチから車で2時間ほどあれば辿り着ける岐阜県中津川市へ。ここは栗きんとんで有名な店が多い。季節になると食べ比べする人で賑わうグルメスポットだ。

出発は少し遅めの午前10時。

『お昼ごはんどきに到着か……』

そう思いながら助手席で、栗きんとんの店を検索していた。すると夫が

「ちょっと立ち寄りたい」

と珍しく主張。車はどんどん山道を進んだ。山じゃないって言ったのに……この手のフライングは冷戦時代に嫌と言うほど味わっていたので、何も聞かずに乗っていた。到着したのは山道の入口。

「30分くらいで登れるって」

 スニーカーを履いてきて良かった。本当は町を散策するためだったが。山道は台風の影響で所々から水が流れていた。土砂崩れなんかに巻き込まれた日にゃ、笑えない。こんな日に軽装で山登りしようなんて言うのは私たちくらいだろうと。ところが頂上には人がいた。

 山登りを終えた直後に何食わぬ顔で運転をした夫を見て、体力の差を感じた。その後、無事に栗きんとんを手に入れ、いざこざも無く帰宅。今回もまずまずのドライブだったと車を降りようとしたとき、両ももが攣った。立ち上がることは出来たがしばらく歩けず、外に1人。夫はさっさと家に入って行った。

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