第44話 母の様子

文字数 961文字

 2週間前の診察で、癌が再発していることが分かり(40話)母が結論を出しました。

 担当医から説明された治療方法は3つ。カテーテル、抗がん剤の注射、抗がん剤の飲み薬。カテーテルは足ではなく、手首から入れるので患者側の負担が少ないなどの説明があったが、抗がん剤に関しては冊子を渡された。

 どの方法で治療するかは、母に決めてもらわなければならない。私は気分が萎えた。介護を始めてから母の性格を嫌と言うほど知らされてきた。本性もあるが、環境から作られてきたものもある。悪口になるが敢えて書く。

①内弁慶。家では私が大将のような物言いなのに医師の前ではモジモジして、私に発言を委ねる。

②依存心が強い。父が側に居ると何でもかんでも「ね、そうだよね?」と自分の発言に同意を求める。呆れるのは判断が間違っていた時「だって、パパが言ったから……」と責任転嫁。ウチの場合は責任転

がふさわしい。加えて言うなら、この行ないが弟嫁の怒りを買っていると言っても過言ではない。

③後出しジャンケン。物事が上手くいかなかった時に「私は、そうなると思った」と自分を正当化する。だったら過程の段階で言うべきじゃないか?自分だけ分かっていたフリをするのはズルイ。

 私が思う母の三大疾病。いずれも家庭内のみで発動されるので、他所(よそ)様には危害は無い。気の小さい、優しい母で通っている。

 フォローする訳ではないが、そればかりではない。常に私や孫たちの心配ばかりしている。以前私が夫と不仲だと知った時、電話で私の苦悩を長々と聞いてくれた。帰省した時も私に手伝わせるどころか、ゆっくり休ませてくれた。上の子の行事で、下の子の面倒が見られない時も、早朝の電車に乗って、両手いっぱいの土産を持って駆けつけてくれた…… 一度や二度ではない。

 今は母の我儘(わがまま)ばかりが目立ち、瞬時には苛立つことが多いが、こうやって落ち着いた気持ちで投稿文を書いていると、過去の清濁が押し寄せてきて、いたたまれなくなる。

 私の噛み砕いた説明と2週間の猶予期間を終えて、母は結論を出した。

「カテーテルにする。先生、手首からだったら足の付け根よりも楽だって言ってたし。薬は今でもたくさん飲んでて、これ以上増やしたくないから」

 術後の痛みに耐えられるよう、今回は痛み止めを沢山もらおうと母にアドバイスしました。





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