第4話 新しい味

文字数 872文字

 最近、旬を意識するようになりました。

 夏はスイカや桃、冬は牡蠣や柿。私の旬に対する常識はこの程度だ。今まで旬を意識して料理を作っていなかった。たまたまスーパーで安かった物が旬の物だったりはしたが。老後と言われる年齢になり、食欲はほどほどに減り、料理をするのも少しずつ面倒くさくなってきたのだが、最近は旬にこだわりたくなっている。

 例えば少し前にはホタルイカ。今は値が下がってきた鮎。そして昨日は採れたてのベビーコーンを皮ごとオーブンに入れて塩で3本食べた。実はもちろん、ヒゲも甘くて美味しかった。ちょうどいい量。付け合わせは、ひと口サイズの鶏モモの唐揚げ4個と数種類の千切りサラダとブロッコリーに冷凍のチーズボール3個。唐揚げの下にしめじを入れたトマトソースを敷いた。

 夫はお(かず)ばかりを先に平らげ、軽く盛った白飯は沢庵などの漬物で食べた。そうね、確かに今日の献立は白飯よりも酒の宛てが良さそうなものばかり。おまけに汁物を作らなかったから、ほうじ茶と一緒に食べてる様は、〆のお茶漬けみたいだった。

 私は好き嫌いがあまりない。だからほとんどの物は口に出来る。過去に行った韓国ではスンデ(豚の血と一緒にもち米や香味野菜をソーセージのような形にした物)、台湾では臭豆腐(シュウドウフ)、インドネシアではドリアン。味覚音痴なのか、許容範囲が広いのか、いずれも美味しく食べることが出来ている。台湾に行ったとき、同行者に

「そんな物、食べるの?」

と言われたので一瞬ためらったが、日本では食べられない味だろうと思い直し食べてみた。日本人の口に合わない物だとの先入観もあったので、最初のひと口が衝撃的に美味しく感じたことを今でも覚えている。臭豆腐も店によってさまざまなので一概には言えないが、私の味覚はその店に合っていた。

『騙されたと思って食べてみて』

と同行者に勧めたが近付いてもくれなかった。人ごとながら『損してるなぁ』と残念に思う。新しい物を食べることって、赤ちゃんが初めて口にする味みたいで、私は好きだ。

 しばらく海外には行けそうにないけど、旬の味を楽しんでいきたいです。
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